2009年1月7日水曜日
寄生者による支配
寄生というと、寄生者は自分の潜り込んだ寄主の挙動に『あなた任せ』で従うしかないようなイメージがあると思う.寄生者への依存度を高めたために体の構造の特殊化や退化などの変化が生じている場合には、なおさらそんなふうに見えるだろう.しかし、実際には寄生者が寄主の行動のコントロールを行うことがあるらしい.ヨコエビで知られている例では、ヨコエビを中間宿主とする寄生虫が次の寄主である魚に乗り移りたい時に、ヨコエビが魚に食べられやすいように、ヨコエビの行動を変化させるという.ふだん昼間は物陰に潜んでいるヨコエビが、明るい岩の上に堂々と姿を現すようになるというわけだ.同様の例はカタツムリでも知られているはずだ.そんな話を昨年末の筑波での講義でもちょっとしたばかりだったのだが、つい先日、これに関係のある面白いニュースが届いた.細胞内小器官のミトコンドリアや葉緑体は、進化の過程で細胞に取り込まれたバクテリアや藻類が細胞の一部と化した共生者だということが定説になっている.潜り込んだものたちは細胞内に住まわせてもらっているのだから、家主である細胞の支配を受けているものだろうと考えられていたが、どうもそうとばかりは言えないらしい.ある藻類について調べたところ、細胞内小器官である葉緑体が細胞の核遺伝子に働きかけて、その発現に影響を与えている場合があるらしいことが発見されたという.良く働くやつだと思って住まわせておいたら、実はあれこれ口うるさい居候だったということが、細胞レベルでもあるのかもしれない.
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