2 月 2 日の夜につくばの宿泊所に到着して一息ついてテレビを眺めていたら、カンブリア宮殿という番組でクロマグロの完全養殖が話題になっていた.天然資源の採捕なしに生活環をまわして卵から稚魚を作り、それを成魚に育成して採卵し、また稚魚を作るというルーチンを完成させるのが、完全養殖である.番組では、近畿大学水産研究所において 32 年かけて果たされたクロマグロの完全養殖までの道のりを紹介していた.産学連携と大学発ベンチャーの先駆けであるということだったので、もう少し詳しい話を知りたくなった.大学の書籍部に関連した本が並んでいた記憶があったので、次週に出かけた時にすぐに購入して読んだ.『世界初!マグロ完全養殖:波乱に富んだ 32 年の軌跡』という本で、近畿大学で教授を務めておられた熊井英水氏を中心に『魚飼い』たちの完全養殖への挑戦の日々が描かれている.この中で、生物研究者に必要な 3 つの要素として、忍耐、観察眼、愛情が挙げられていた.興味を持った対象をとことん分かりたいと思う気持ち、そのために心を開いて相手をよく見ること、そして、相手を分かり得ない時に道が開けるまで耐え忍ぶ、そういうことだろう.この本には、研究に向けてのそんなひたむきさが述べられているばかりでなく、私学における研究費獲得の工夫と努力について、基礎科学と応用科学の境界をどう考えるかなどについても触れられており、様々に考えさせられた.理学と水産学の境界分野である海洋生態学という橋渡し領域に身を置く立場としては、学ぶことも多かった.行政法人化のなされた国立大学においては、私学のノウハウから学ぶべきところも大だと思う.
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図鑑に写真が掲載されているせいか、 ワレカラモドキは ダイバーさん たちによる認知度がけっこ う高い種類である. ワレカラの仲間とし ては 3 cm を超えるサイズのものも あって大きめだし、 シロガヤやアカ ガ ヤな ど大きめのヒドロ虫の群 体の茂みに 隠れているので、比較...
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ナマコの不思議な食事風景を見た.自宅の玄関に、いろいろな生き物を入れては眺めている小型の水槽があって、今はその中に大きさ 20 cm くらいのマナマコが入っている.食用に貰ったのだが、すぐには食べなかったので水槽に入れたまま、ペットになってしまったものだ.眺めていると、赤みを帯...
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新種を作ったことがある.大学院時代に発見した種名の分からないワレカラをよく調べたところ,過去に未記載の種であることが分かり,新種としての論文記載を行って発表したのである.ヒドロ虫類の茂みに棲んでいるワレカラだったのだが,体の表面に毛が少なくて光沢があったので,ラテン語辞典を調べ...
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東京海洋大学で開催された国際甲殻類学会の東京大会はたいそうな熱気に包まれていた.世界各国から集まった研究者たちが其処此処で固まりあって話し合う姿が見られ,私たちもそんな輪の中に入って楽しい時を過ごした.研究材料を同じくするいわば同好の士が集うと話も尽きない.関連分野の研究のレベ...
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