2009年3月23日月曜日

狼煙崎の山桜

 実験のために大浦湾内に船を出してもらった.天気がよくて暖かく、仕事は生け簀作業の短時間のものだったので、帰りがけの船上の数分間には周りを見廻す心の余裕があった.船が岸に向かう時、左手には狼煙崎の崖が急な傾斜をもって迫っている.その斜面には多くの樹種の木々があるようで、いろいろな濃さの緑が濃淡の模様を作っている.いまの時期にはその合間に山桜のやや薄桃がかった白色のパッチが加わって、崖全体が巨大なパッチワーク模様になる.何ともいえずに美しいものだ.一年のなかでこの素敵なアートを楽しむことができるのは、ほんの数日のみである.空が青く澄んで晴れ渡った日には、空と崖の色彩の対比も素晴らしい.狙ってもなかなか見られる風景ではない.狼煙崎の眺望は、海の近くに住む私たちだけに許された、ささやかな贅沢である.

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