2009年2月28日土曜日

ヤギさんのハーモニカ

 下田市で行なっている『EARTH企画』というのがあって、良いミュージシャンの音楽や時には落語などを小さなホールの良い雰囲気の中でわりに安く楽しむことができる.昨夜のライブ出演は『NIIDA UNIT』というブルース中心に演奏するバンドで、2 年前から 1 年に 1 回ほぼこの時期にライブを行っている.ボーカル兼ギターは下田のレコード屋さんの店長で、かつてはセミプロ的にバンド活動をしていたらしい.味わいのあるボーカルがミドルエイジの憂愁を歌い上げる.ボーカル以外のバンドメンバーはみなプロミュージシャンで、有名バンドでの演奏経験のある人もいて、胸に響く演奏が繰り広げられる.私が聴きに出かけるのは一昨年以来 2 度目で、実は目当てのミュージシャンがいる.それはハーモニカの八木のぶおさんだ.ハーモニカを手にする人なら知らぬ人はいない名手だ.それが下田までやって来て、演奏してくれて、しかもこのバンドではハーモニカの演奏がフューチャーされた曲などもあって、八木さんがフロントに出てくるチャンスがとても多い.何と幸運なことだろう!今回も八木さんはブルースハープとクロマチックハーモニカを巧みに使い分けて、パワフルだけれど豊かで陰影に富んだ演奏を繰り広げていた.ブルースハープでの滑らかな高音域への移動や、クロマチックでのレバーを使ったトレモロやフレーズは真似したいものだ.ライブでは CD からは分からないワウのかけ方もよく見て取れる.ハーモニカのホールドの仕方とマイクの位置関係も刻々と変わっていって、良い勉強になった.写真は休憩時間に撮影した八木さんのハーモニカだ.ブルース戦士の武器である.

2009年2月26日木曜日

カッパのフード

 雨中の船上作業を行なう時、漁撈者用の青いカッパを着る.生地が分厚くて若干ゴワゴワしているが、風雨を避けるための性能は抜群である.上からバケツの水をかぶっても体が濡れることはない.風が遮断されるため、防寒にも役立つ.ただ、いつも不快感があるのは、フードである.しっかりフードをかぶってしまうと、視野が前方に限られて、競馬でレースに出走する馬のような状態になってしまう.左右の状況を確認するためにはフードの中で頭をぎこちなく廻さなければならない.カッパのフードからの視界確保に何かしら工夫がなされている商品はあるだろうか.探してみたい.愛する青カッパをさらに快適に使ってみたいものだ.

2009年2月25日水曜日

悲しい便座

 子供たちでざわざわする狭小な家の中で父親の平和な居場所はトイレのみである.新聞やら月刊雑誌やらを持ち込んで籠城する.ところが、タイミングをはかり間違えると、トイレに落ち着いた途端にドアがはげしくたたかれ、「もれちゃうから早く出て!」という言葉に追い出される.だから、トイレに逃げ込むときには子供たちを見渡して、一通りトイレに行った後であることを見届けたうえで実行に移る.ところが、事はそう簡単には運ばない.トイレに潜り込んで着座した途端に後悔に襲われることがままある.小さな子どもたちはおしっこを余分な方向に飛ばす.それが便座にも飛び散る.うちは布の便座カバーをかけているために、それらはしっとりと便座カバーに浸みこむ.その上に腰を落ちつける瞬間の悲しさは何ともいえない.ヒヤッとしてじんわりと不快感が広がり、それが持続する.とても長居できる状態ではなくなる.父は辛いのである.

2009年2月24日火曜日

描かれた間接効果

 夕食後、子供たちが居間から去って寝床に向かったあと、子供たちの消し忘れたテレビのチャンネルをいじってみたところ、江戸時代の絵画がいろいろと紹介されていた.長沢蘆雪の絵もいくつか出てきて、思わず見入ってしまった.去年の夏には上野で迫力と可愛さの混じった虎の絵を見たけれど、他の絵についてはよく知らなかった.番組の中で3幅の掛け軸からなる床の間の絵が紹介されていて、真ん中にはネズミを手に高く掲げる男、左にはそのネズミを狙って見上げる猫が描かれていた.そして右手にはのどかに餌をついばむ雀があった.解説では、男がネズミによって猫の気を引いているおかげで雀は平和に餌取りができると、そんな光景を表したものだと言う.男の行為が廻り廻って雀を利しているという、いわば群集内の間接効果を蘆雪が意識して描いていたことになる.あの大きな虎の襖絵の裏の絵についても紹介されていて、これも面白かった.虎と虎が襲いかかる相手である観覧者を模して、猫とそれが狙う鯉の絵が裏側に描かれているのだ.食う食われる関係についての面白いシャレである.現代生態学の世界に在れば、蘆雪はよい群集研究者になっていたに違いない.

2009年2月23日月曜日

波と帆とトイレ

 昨日の葉山の海岸は風が強く、白波がビュンビュン飛んでいた.その波間を数えきれないほどのウィンドサーフィンの帆が行き交っていた.まるで飛ぶように風の中で舞っていた.海岸通の渋滞のおかげで、しばらく風景を楽しむことができた.風の吹く方向とは関係なく帆はあらゆる方向に向かって行き来てして、不思議とぶつかることも倒れることもない.こんな日に海に出ているのはよほど手練の人たちなのだろうと思った.いい風景だと思っていたら、下の息子がおしっこに行きたいと騒ぎ出した.仕方ないので、女房と2人を車から降ろし、海岸で用を足させて、渋滞のノロノロ車に追いついて貰うという算段にした.ところが息子が用を足し終えたのをバックミラーで確認した頃から車が流れ出し、ふたりを置き去りにしそうな勢いになった.いい加減走ったところで赤信号で止まることができて、必死の形相で駆け出したふたりはなんとか車に乗り込むことができた.息子もちょっとは懲りたことだろう.車に乗る前にはきちんとトイレに行きなさい.

2009年2月22日日曜日

葉山のローラーすべり台

 臨海実習の終わった昨日の午後から、葉山に住む友人宅に家族で遊びに出かけた.渋滞に巻き込まれて遅い夕食になり、子供たちが眠ったあとは我ら親たちが遅くまで話し込んだ.宿泊させてもらい、今日は逗子市からちょっと越境して横浜市の金沢自然公園に出かけた.自然公園の中には動物園があって、広大な敷地の中に動物たちの住まいが散在しているため、相当な距離を歩くことになった.コアラ舎にも行くことができ、ちょうど食事時間だったようで、ユーカリの枝をつかんで無心に食べるコアラたちを観察することができた.動く様子を間近に見たのは始めてのことで、市販のコアラぬいぐるみが本当はあまり誇張なく作られているのだということを遅まきながらあらためて認識できた.自然公園内には動物園以外にアスレチック広場があって、ここの目玉としてローラーすべり台がある.3 つあって、最長はほぼ 100 m だという.私は長いローラーすべり台というものが大好きなのだが、ここでは乗り口のところに『6 歳から12 歳用の遊具です.幼児には大人が同伴して下さい』と書いてあるので、どうもやりにくい.3 回ばかり 5 歳の息子らと列に並んで、付き添いのふりをしてこっそり楽しんでいたが、やがて息子が友人の子供たちとどこかに遊びに行ってしまって、私は取り残され、乗り待ちの列が長くなってきたこともあって、それ以上乗ることは諦めた.中身がガキのオジサンたちがこの類いの遊具を存分に楽しめることができる場所がないものかとも思ったが、そんな場所の光景を思い浮べるとやっぱり気持ちが悪い.やはり、こっそりと時々楽しむぐらいにしておこう.

2009年2月21日土曜日

実習が終了

 5 泊 6 日の公開臨海実習が終了した.大学院生主対象の実習なのだが学部生の参加も認めているため、年齢層の揃った本学の実習とは異なって参加者の年齢幅は広かった.でも、同じ実験プロセスの上を全員で進むうちに自ずと連帯感も生じてきて、学部生が院生から色々な経験を聞く機会もあったようで、かなりの盛り上がりが感じられた.実験の待ち時間を利用して、大学院生に自分の研究内容の発表を行なってもらう機会も設け、これがまた楽しかった.まず学会では聞くことのないような分野の話をお互いに分かりやすく話した.そもそも同じ目的で実習に参加して来たのだから、接点はもっているわけだ.そういう意味では、どんな話でも自分のところにたぐり寄せるきっかけを皆がもっていたわけで、質疑の時間もかなり長くなった.解散前の日は懇親会が盛り上がり、話に夢中になっていたせいで 20 日のブログ書きを忘れてしまった.臨海実験センタ−としては季節外れのこの実習の、また来年の開催を楽しみにしたい.

2009年2月19日木曜日

玄関ナマコ

 1 ヶ月ばかり前に書いたナマコの話の続きである.よく考えてみると、玄関でナマコを飼っているというのは、奇妙なことだ.宅配便の配達人も置き薬の交換販売員もみな面白がる.私たち家族が楽しく思うのは、眼もないし顔らしい顔もないのに、何だか愛らしくしかも美しいことである.うちのマナマコはいわゆる『赤ナマコ』で、体色は赤みを帯びた茶色の斑のつくる複雑な色合いで、頭を動かして動き回る時には、蛍光灯の灯りに触手や管足が透けてほのかな紅色がユラユラする.水槽の中にはナマコの他にスリコギズタという美しく若緑色に透けるイワズタの類の緑藻が入っていて、濾過槽から落ちる海水の起こす水流に揺れている.両者は小さな水槽の中で平和に対照をなして、玄関の一角に幸せな空間を築いている.

2009年2月18日水曜日

テーマに沿って

 私達が実施する臨海実習では、実習の始めに班別の研究テーマ設定を行なってサンプル処理や解析を進め、最終日前日にまとめの研究発表会を行なうことが多い.実習全体を通じて目標を持って作業を行うことができるため気合いが入るし、期限までにまとめるための緊張感もある.現在実施中の 5 泊 6 日の実習ではフィールド作業がはじめの方にあって、あとは実習室での実験操作が主である.実験では、分析機器にサンプルを入れてからデータが出てくるまでに短い場合でも1 時間、長い場合には 12 時間以上を要する.慎重に下準備をしてから分析にかけるわけだが、結果が出てくるまでは準備操作が適正であったか否かは分からない.待ち時間には自分たちの研究の内容紹介の時間をもうけたり、次の実験操作に向けての準備を行ったりするのだが、機器での分析結果が出てそれを見るまではバックグラウンドに緊張を伴う.どこかしらの実験プロセスで失敗があると必要なデータは全く得られないため、班単位で実験操作の振り出しに戻ることになる.成功すれば喜びもひとしおで、最後の発表会に向けての準備にも気合いが入る.失敗のあった時には時間調整しながらまとめができるようなフォローを行なう必要がある.期間の限られた実習は、学生たちにとっては関門をくぐりながらリスクを背負って進む練習となり、指導教員と大学院生 TA(ティーチングアシスタント:実習指導補佐)にとっては楽しく学んでもらうための雰囲気づくりと背骨の通った実習となるような舵取りに心を配る鍛錬の場となる.

2009年2月17日火曜日

下田の雪

 全国公開臨海実習の 2 日目である.今年は 7 大学からの参加者が集った.昨日までは春の嵐が吹き荒れて海に出られるような状況ではなかった.ところが、船からの採集を行う午前中までには波風は嘘のようにおさまって、海に出るのには良いコンディションになった.ただ、朝方からずいぶんと冷え込んでいた.実習の開始前に寒い思いをしながら採集道具の準備を行っていたら、なんと空から白いものがちらつき始めて、やがて吹雪のような様相になった.下田では雪は珍しい.それが、ものすごい勢いで降り始めたのだ.私達はワカメ採集の船上作業を降りしきる雪の中で行なうことになり、ずいぶんと冷たい思いをした.ただ、雪の中での作業はなんだか心楽しくて、おそらく参加学生諸氏にも良い思い出となったことだろう.でも、雪が降っていたのは私達が海に出ていた 1 時間半くらいの間のことで、全員が実習室に引き揚げてサンプル処理の作業を始める頃には、すっかり止んで青空さえのぞき始めた.午前中の雪中作業は、今となってはなんだか夢の世界の出来事のようである.

2009年2月16日月曜日

電動歯ブラシを使う

 電動歯ブラシを女房から戴いた.以前から興味はあって、ホームセンタ−や電気店で手に取って眺めてみた事も度々あった.でも、自分が使っている様子を思い浮べる事が難しく、なんだか怖いし効果も分からないし、購入費も電気代もかかりそうだといろいろな言い訳を並べて、利用者となることを回避してきた.でも、いよいよ使ってみることになった.すぐ使えるものだと思っていたのだが、パッケージを開けてみると、初回には 16 時間の充電が必要だと書いてあった.出ばなをくじかれた形となったが、半日遅らせて挑戦してみた.まず回転ブラシに歯磨きペーストを付けてスイッチを入れたところ、白いペーストがそこいら中に飛び散った.家族のひんしゅくを買ったので説明書を改めて読んでみたところ、ペーストを付ける時には口に入れてからスイッチを押すようにとの注意書きが記されていた.さて、歯ブラシを口に含んでスイッチを入れ、歯茎にあててみたところ、これが何とも気持ちよい.もちろん歯にも当てがってブラッシングもしたが、それがとくに劇的に面白いということはない.したがって、これからは歯茎のマッサージを主目的とした電動の使用となりそうな気がする.電動歯ブラシのあと、普通の歯ブラシでのブラッシングも行なった.普通の歯ブラシのソフトなタッチや歯磨きペーストとのなじみの良さは捨て難いもので、これについては電動が取って代わることはできない.掃除で例えれば、ほうきでの掃除と掃除機での掃除だろう.ようやく歯の掃除機を購入したということだ.

2009年2月15日日曜日

読書競争の勃発

 子どもたちに少しでも本を読ませようと思って、食卓近くのガラス戸に読んだ本のタイトルとページ数と読了日とを記入する表を貼り付けた.古カレンダーを剥いだ紙の裏にマジックで手書きした雑な作りのものだ.記入欄は、深い考えもなく子供 3 人分ばかりでなく親の分も合わせて 5 列作った.大した効果は期待していなかったのだが、これがきっかけとなって我が家では読書競争が始まった.保育園年中の下の子も参戦しての競争である.子供たちの競争心に火がついてタイトル数を競うばかりでなく、父と母の間にも競争が生じている.現在トップを走るのは負けず嫌いの保育園年中さんで、文字数の少ない絵本を読み貯めて、あっという間にトップに躍り出た.これを小学生である上の 2 人が抜きつ抜かれつ追う展開となっており、その競争から遅れをとって両親がやはり抜きつ抜かれつしながら競っている.この競争が、すぐに飽きられて中止に至るのか、紙を継ぎ足しながら何カ月も続くのか、さっぱり予測できないが、少々しんどい思いをしつつもなんだか楽しいこの頃である.

2009年2月14日土曜日

最終講義のとき

 大学教員は退職に際して『最終講義』を行なう.通常の講義時間よりも長い時間枠の中で、自由に語ってよいことになっている.まれに最終講義を辞退される先生もあるが、通常は大学における生活の締めくくりとして、自らが行ってきた研究と教育の道筋について語られる.最終講義はつつがなく大学生活を送ってくることができた証であり、教員にとっての卒業式である.この最終講義に与えられた時間をどのように活かすかに、語られる先生の考え方や人となりが反映されていることが多く、それを聴講できることは大変に貴重な勉強の機会となる.同じ大学の組織でもあまり縁のなかった先生である場合には、その先生の研究がどういうものであったのか、その全貌を知ることもできる.今日は日帰りで筑波に出かけて、2 教授の最終講義を拝聴してきた.スタイルの異なる最終講義であったが、いずれもさりげない語りの中に静かに心に沁みる深い感銘を伴う内容であった.時間をかけて満ちてゆき、大きな一つの世界を構築し、そこから幾多の種子を撒くことのできた人たちの与えてくれたまばゆい時間だった.

2009年2月13日金曜日

春の嵐が

 午後から春の嵐の訪れに向けて風が強くなり波が高くなる予報だったので、カジメの定期調査を午前中のごく短時間のうちに済ませた.調査している小一時間の間にもだんだん波が高くなってきたので、潜水器材をすぐに船に揚げて、逃げ帰るように浜に戻った.そして、調査用ボートはそのまますぐに陸揚げした.きょう潜って寂しかったことは 2001 年以来生き延びてきたカジメの一株がついに力尽きたことだ.嬉しかったことは 30 以上の新しい小さな個体が調査区の中に加入してきていたことだ.失われつつ新たに生み出され、創り出されてゆく.それが、春の訪れなのだ.

2009年2月12日木曜日

女性と爪

 ラジオで女性が男性のどこを見るかという話題があって、若い女性から、女性は男性の手と爪を見ているというコメントがあって、他の多くの女性がそれに同意していた.これに対し、男性は女性の爪に基本的には大きな興味がないということが出演男性の間で同意されていた.こういった類いの感覚の違いはたくさんあって、爪は氷山の一角ではないか.当たり前だと思っている感覚が両性の間で根本的な部分において違っている場合があるのではないかと、なんだかちょっと怖くなった.

2009年2月11日水曜日

マグロの完全養殖

 2 月 2 日の夜につくばの宿泊所に到着して一息ついてテレビを眺めていたら、カンブリア宮殿という番組でクロマグロの完全養殖が話題になっていた.天然資源の採捕なしに生活環をまわして卵から稚魚を作り、それを成魚に育成して採卵し、また稚魚を作るというルーチンを完成させるのが、完全養殖である.番組では、近畿大学水産研究所において 32 年かけて果たされたクロマグロの完全養殖までの道のりを紹介していた.産学連携と大学発ベンチャーの先駆けであるということだったので、もう少し詳しい話を知りたくなった.大学の書籍部に関連した本が並んでいた記憶があったので、次週に出かけた時にすぐに購入して読んだ.『世界初!マグロ完全養殖:波乱に富んだ 32 年の軌跡』という本で、近畿大学で教授を務めておられた熊井英水氏を中心に『魚飼い』たちの完全養殖への挑戦の日々が描かれている.この中で、生物研究者に必要な 3 つの要素として、忍耐、観察眼、愛情が挙げられていた.興味を持った対象をとことん分かりたいと思う気持ち、そのために心を開いて相手をよく見ること、そして、相手を分かり得ない時に道が開けるまで耐え忍ぶ、そういうことだろう.この本には、研究に向けてのそんなひたむきさが述べられているばかりでなく、私学における研究費獲得の工夫と努力について、基礎科学と応用科学の境界をどう考えるかなどについても触れられており、様々に考えさせられた.理学と水産学の境界分野である海洋生態学という橋渡し領域に身を置く立場としては、学ぶことも多かった.行政法人化のなされた国立大学においては、私学のノウハウから学ぶべきところも大だと思う.

2009年2月10日火曜日

金いろの物体

 東京駅と筑波をむすぶ高速バスは隅田川の吾妻橋近くを通る.吾妻橋のたもと際のアサヒビールの建物のてっぺんには、金色の巨大な物体がうねるように、雲にたなびくように乗っかっている.筑波に向かう時には遠目に見えて、金色の巨大な人魂か元気のよいウンコのように見える.東京駅に戻る時にはこの金色の物体のすぐ足元を通過する.高速バスの進行方向右側の座席に座っていれば、金色の塊を窓越しに見上げることができる.そして、金色の巨大な球体が天を覆っている様子を束の間楽しむことができる.バスからちらっと見る分には面白いのだが、あの辺りには毎日金の球体を空に仰いで暮らしている人たちがいるはずである.どんな思いで眺めているのだろうかちょっと興味がある.吾妻橋の周辺には風情のある店々もありそうなので、一度ゆっくり散歩してみたいと思っているのだが、いざ東京に出てゆくと電気屋まわりや書店めぐりに終始してしまい、なかなか東京散歩に出かける機会を得ない.金色の物体が空を覆う町並みを歩いてみたい思いはなかなか果たせないでいる.

2009年2月9日月曜日

コンビニの扉

 宿泊所に午後 10 時過ぎに着いてチェックインを終えてから、朝食を買うためにコンビニに向かった.入り口のドアの外側に『押す』と書いてあるので押して入ろうとしたら、中にいた女性が中から押し開けて出て来た.引くべきドアを押すなんて無理なことをする奴だなと思って、入れ替わりに店内に入りながらドアの内側をひょいと見ると、そこにも『押す』と書いてあった.要するに両方向に押すべきドアだったのだ.片側から押している時は逆から見れば引くことになるのだから、よく考えるとなんだか奇妙で、同時に内外から人が来た場合、ドア押しの早撃ち競争みたいになるような気がする.このばあい『押す』を『押せ』という命令に解釈しているからいけないのかもしれない.『押す』を『押して開けることができます』という表示であり、店側の親切であると考えればよさそうだ.

2009年2月8日日曜日

となりの雑誌

 電車で隣席の人が本や雑誌を読んでいると、気になってしまう.どんな人がどんなものを読んでいるのか、読んでいるものと読んでいる人間の形質とが私の想像の範囲の中でマッチしているか、それとも私の想像の範囲を大きくはみ出ているか、そのあたりを判じてみたくなる.自分でもあまりよい趣味だと思えないし、実際にはジロジロ見るわけでなくてちらっと見るだけなので、何を読んでいるかについての情報を得られることは少ない.でも、昨夕はこんなことがあった.熱海から東京に向かう上りの新幹線で、3列シートのひとつ間を空けた隣に座っていた若い男性が、いかにも人となりにあった雑誌を読んでいて、なんだか心楽しくなったのだ.彼は丸刈りで首の短い頭とがっちりとした体をシートに埋めて、TOUCHDOWN という名の雑誌を拡げて熱心に誌面をむさぼっていた.存在すら知らなかった誌名だったが、ラグビーかアメフト関係の雑誌であろうことは容易に想像がついた.彼が読むのにぴったりの雑誌だという気がした.あれだけ熱心に内容を研究していたのだから、きっと彼はよい選手なのだろう.つくばに着いて雑誌名を検索してみたら、TOUCHDOWN はアメリカンフットボールの専門誌であることが分かった.

2009年2月7日土曜日

袋一杯の菓子

 子供たちが節分の菓子撒きに出かけてきた.出かける前に、菓子撒きや豆撒きの際には上から来るものを捕らえようとせずに、下を向いて取りこぼしを拾う方が確実に多く拾えるとアドバイスをした.アドバイスの効果があったのか,子供 3 人で大きな袋一杯の菓子を拾ってきた.3 人分を同じ袋にまとめ、協同管理しながらここ当分はおやつの時間にその袋から消費してゆくという.結構なことだと思って袋をよく見たら、市指定のゴミ袋だった.そのうえ女房から、菓子撒きのための財源のほとんどは母子の日頃の廃品回収作業によるものだと聞いて、感心しながらも、なんだか可笑しくなってしまった.

2009年2月6日金曜日

ワカメがやせている

 冬の初めに海水温が低くなっていたので、今年はワカメの生育がよいだろうと思っていたのだが、どうも調子が良くないようだ.茎は太くならないし葉状部の厚みも増さない.どうも 2 月にしては海水温が高いようである.それに、よく考えてみると、海上で作業する時にとても暖かで仕事が楽である.10 余年前にこの調査を始めた頃は、海上に出て作業を始めると手がかじかんでとても辛かった.気合いを入れて取りかからないと、とても仕事にならなかった.それが、ここ数年は何とものどかな感じで作業できるのだ.やはり高水温の影響がワカメに如実に表れているのだろう.あと 1 ヶ月は十分に海水温が下がってくれないと、私はデータが取れないし、実験もできない.漁師たちは商売にならなくなってしまう.訪れるべ四季には、きちんと約束通りに訪れてほしいものである. 

2009年2月5日木曜日

小型捕鯨から沿岸捕鯨へ

 『クジラは誰のものか』という本を読み終わった.世界の人々の捕鯨についての考え方と日本のおかれている現状をよく理解することができた.著者の主張は、民族の歴史、文化や考え方の多様性を考慮せずに捕鯨について論じてはならないというところにあると感じた.日本の捕鯨は西洋捕鯨と生存のための捕鯨の両極のいずれにも位置しないグレーゾーンにあり続けたために,国際的な理解を得難いということのようだ.ちょうど読了直後の新聞に国際捕鯨委員会 (IWC) の議長提案について掲載されていた.現在日本が行なっている捕鯨は、IWC が規制の対象としていない小型鯨類を沿岸で獲る小型捕鯨と南極海における調査捕鯨である.今回の議長提案では、沿岸捕鯨でこれまで禁止されてきたミンククジラなどの捕獲が容認されるというものだ.交換条件は、南極での調査捕鯨の規模縮小、そしてやがては中止へと向かうことである.そうなると、日本人が口にする機会のある鯨肉は南極海産から北西大西洋産に移行することになる.気になるのは汚染である.南極海の鯨に比べて北西太平洋産の鯨は水銀やカドミウムや PCB による汚染の程度が著しいと前述の本に述べられていた.汚染鯨肉が市場に出まわる機会が増すのではないかと危惧することは杞憂だろうか?


2009年2月4日水曜日

チラシ配り

 筑波大学が主催する『未来の科学者養成講座 BS リーグ』というプロジェクトが今年度から始まり、現在第2期生の募集中である.http://mirai.biol.tsukuba.ac.jp/target.html
小学 5 年生から中学 3 年生の生徒たちからとくに生物好きの子たちを募って、生物の研究のサポートを大学院生や教員が通年行ない、また、山での実習や海での実習を体験してもらうのである.年度末には研究発表会があって、研究内容は審査を受ける.そんなプロジェクトで、要するに、未来の生物学者あるいはもっと広い意味での科学者の卵を早くから育てる計画なのだ.今日は自転車を駆って市内の公共施設等を廻り、BS リーグの募集チラシを置かせてもらってきた.それから、地元の新聞社にも公募情報の掲載を頼んできた.全国公募のプロジェクトなのだが、是非ともこの伊豆からも生物好きの子供たちに、名乗りを上げてもらいたいからである.つどえ、伊豆に住む科学者の卵たちよ!

2009年2月3日火曜日

伊豆急のミニミニ時刻表

 伊豆急が 3 ケ月毎くらいに発行して無料配布している携帯型のミニミニ時刻表がある.これにはとてもお世話になっている.伊豆急と伊東線から JR や新幹線への乗り継ぎが一目で分かるようになっているので、出張時には大変に重宝している.折り畳むとハンディーで見やすくもある.ただ、乗り継ぎ時間が短い時には、乗り継ぎ可能な電車が掲載されていないことがあって、これだけは要注意である.駆け込み乗車など無理をしないようにとの配慮であろうが、空いている時には、急げば乗り換え可能なこともあるのだ.熱海で伊東線から新幹線に乗り換えようとして、ようよう新幹線ホームに登ったところが、目の前で新幹線のドアが閉まって取り残された時には、いつも感謝を捧げている時刻表をずいぶんと恨んだものである.

2009年2月2日月曜日

キャンパスの銅像

 つくばのキャンパス内には、銅像が立っていることがある.自然の風景は、ふつう人の感性に余分な負荷をかけない.しかし、建物や像というものは、それをそこに設置した人が作り上げたイメージに基づく風景のデザインを、善かれ悪しかれ人に押し付けてくる.その場に居合わせる人間には、作り上げられた風景を拒絶する資格はないようなので、何となく像の存在に居心地の悪さを感じる時は、自分好みに作り変えてみたくなる.銅像に何か着せたり、被せたりしたくなる時、そんな心持ちが多少はあるのではないだろうか.東京の JR 浜松町駅にある小便小僧にはいつも有志の人々が季節に合った衣装を着せてやって、今では街の風物詩になっているが、あれも存外最初のきっかけはいたずら心だったのではないだろうか.浜松町の像ほどではないけれど、つくばキャンパス内の『大気』と名付けられた像にも、季節によっていろいろな物がくっつけられている.クリスマスにはサンタの服を着ていたし、夏は浮き輪のような物を持っていた.不遜ながら、時々通りかかる私には楽しい見物である.像高がかなり高いので、梯子でも持ってきて、作業をしているはずで、大変ないたずらである.いつも同じ人がやっているのか、特定のサークルがやっているのか、付けるばかりでなく外すこともやっているのか、あるいは大学側が外しているのか、そのあたりのことは全く分からない.いまは、節分の鬼の面を付けている.筋骨隆々とした立派な赤鬼である.

2009年2月1日日曜日

鼻でうがい

 インフルエンザやら風邪やらが流行っているが、私はまだやられていない.今のところ元気である.でも、自宅にインフルエンザ小僧がいて、娘も風邪を引いていて、女房までマスクをしていると、さすがに危ない気がする.手洗いとうがいは欠かしていないが、それだけでは防衛策として不十分な気がする.今の時期にフィールド仕事も繁忙期に向かうので、何としても寝込むわけにはいかない.ウイルスは接触感染や空気感染するらしいが、水には弱いらしい.でも、喉だけうがいして、空気が行き交う鼻を放置しておくのは、片手落ちの気がする.そこで、鼻からもうがいをすることにした.うがいと言っても、水を吸い込んで出すことを 2 回から 3 回ばかり繰り返すだけである.手に水をすくって、鼻に吸い込むと、鼻の奥に痛みのようなツーンとしたものを感じる.そこまでで、水を出す.それを数日繰り返すうちに、だんだん慣れてきて、鼻の奥の痛み間も少しずつ和らいできた.終わったあとに不思議な爽快感があるおかげで、もう始めて 1 週間以上経つ.自分の鼻が、吸水にどれくらい順応してゆくかにも興味がある.それに、潜水中にマスクがはずれた時のパニック防止にも役立つ可能性がある.このインフルエンザ流行期をこれで乗り切ることができれば、鼻うがいは私の日常習慣になるかもしれない.

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