2009年2月25日水曜日

悲しい便座

 子供たちでざわざわする狭小な家の中で父親の平和な居場所はトイレのみである.新聞やら月刊雑誌やらを持ち込んで籠城する.ところが、タイミングをはかり間違えると、トイレに落ち着いた途端にドアがはげしくたたかれ、「もれちゃうから早く出て!」という言葉に追い出される.だから、トイレに逃げ込むときには子供たちを見渡して、一通りトイレに行った後であることを見届けたうえで実行に移る.ところが、事はそう簡単には運ばない.トイレに潜り込んで着座した途端に後悔に襲われることがままある.小さな子どもたちはおしっこを余分な方向に飛ばす.それが便座にも飛び散る.うちは布の便座カバーをかけているために、それらはしっとりと便座カバーに浸みこむ.その上に腰を落ちつける瞬間の悲しさは何ともいえない.ヒヤッとしてじんわりと不快感が広がり、それが持続する.とても長居できる状態ではなくなる.父は辛いのである.

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