2009年2月24日火曜日

描かれた間接効果

 夕食後、子供たちが居間から去って寝床に向かったあと、子供たちの消し忘れたテレビのチャンネルをいじってみたところ、江戸時代の絵画がいろいろと紹介されていた.長沢蘆雪の絵もいくつか出てきて、思わず見入ってしまった.去年の夏には上野で迫力と可愛さの混じった虎の絵を見たけれど、他の絵についてはよく知らなかった.番組の中で3幅の掛け軸からなる床の間の絵が紹介されていて、真ん中にはネズミを手に高く掲げる男、左にはそのネズミを狙って見上げる猫が描かれていた.そして右手にはのどかに餌をついばむ雀があった.解説では、男がネズミによって猫の気を引いているおかげで雀は平和に餌取りができると、そんな光景を表したものだと言う.男の行為が廻り廻って雀を利しているという、いわば群集内の間接効果を蘆雪が意識して描いていたことになる.あの大きな虎の襖絵の裏の絵についても紹介されていて、これも面白かった.虎と虎が襲いかかる相手である観覧者を模して、猫とそれが狙う鯉の絵が裏側に描かれているのだ.食う食われる関係についての面白いシャレである.現代生態学の世界に在れば、蘆雪はよい群集研究者になっていたに違いない.

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