2009年2月19日木曜日

玄関ナマコ

 1 ヶ月ばかり前に書いたナマコの話の続きである.よく考えてみると、玄関でナマコを飼っているというのは、奇妙なことだ.宅配便の配達人も置き薬の交換販売員もみな面白がる.私たち家族が楽しく思うのは、眼もないし顔らしい顔もないのに、何だか愛らしくしかも美しいことである.うちのマナマコはいわゆる『赤ナマコ』で、体色は赤みを帯びた茶色の斑のつくる複雑な色合いで、頭を動かして動き回る時には、蛍光灯の灯りに触手や管足が透けてほのかな紅色がユラユラする.水槽の中にはナマコの他にスリコギズタという美しく若緑色に透けるイワズタの類の緑藻が入っていて、濾過槽から落ちる海水の起こす水流に揺れている.両者は小さな水槽の中で平和に対照をなして、玄関の一角に幸せな空間を築いている.

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