ノルマンタナイスで生物検定をする話である.例えば船底に塗るための新しい防汚塗料を開発したとき、その生物に対する効果を調べることは案外に難しい.ちょっと考えると、塗料を塗った板を海水に入れて、その海水の中で生物の生死判定を行えばよさそうである.ところが海洋生物で、こういった目的に適った材料がなかなかない.採集しにくくてもダメ、飼育しにくくてもダメである.また小さすぎたら見えないし、大きすぎると扱いづらいうえに数を揃えられないだろうし、それにコストもかかりすぎる.また、生死を判別しにくい生物も厄介である.私が塗料会社との足掛け10年の共同研究の中で思いついたのが、ノルマンタナイスを使うことだった.ノルマンタナイスはふつう3-4 mm くらいの体長なので、慣れないと肉眼での生死判別は難しい.だが、巣を造る性質を使うと、巣の大きさは肉眼でハッキリ分かるくらいなので、都合が良い.大腸菌の数を寒天培地での培養後のコロニー数から知るのと、ちょっと似ている.シャーレの中に塗料溶出液や塗装板片を入れて、巣材と海水を入れて、30 分ばかり待つ.そして、さっと巣材を洗い流せば、巣がシャーレ面にハッキリ残る.タナイスが元気であれば、たくさんの巣が残る.これまでの試験から、この方法が使えそうなことが分かってきた.塗料性能試験ばかりでなく、海洋における微量物質に対する試験などにも使えるかもしれない.飼育が容易なので、累代飼育等で感受性の異なるいろいろな系統を創ることもできるかもしれない.夢は膨らむのだが、実験時間や人手がなかなか確保できないのが、残念である.
2008年9月28日日曜日
ノルマンタナイスで生物検定を
ノルマンタナイスで生物検定をする話である.例えば船底に塗るための新しい防汚塗料を開発したとき、その生物に対する効果を調べることは案外に難しい.ちょっと考えると、塗料を塗った板を海水に入れて、その海水の中で生物の生死判定を行えばよさそうである.ところが海洋生物で、こういった目的に適った材料がなかなかない.採集しにくくてもダメ、飼育しにくくてもダメである.また小さすぎたら見えないし、大きすぎると扱いづらいうえに数を揃えられないだろうし、それにコストもかかりすぎる.また、生死を判別しにくい生物も厄介である.私が塗料会社との足掛け10年の共同研究の中で思いついたのが、ノルマンタナイスを使うことだった.ノルマンタナイスはふつう3-4 mm くらいの体長なので、慣れないと肉眼での生死判別は難しい.だが、巣を造る性質を使うと、巣の大きさは肉眼でハッキリ分かるくらいなので、都合が良い.大腸菌の数を寒天培地での培養後のコロニー数から知るのと、ちょっと似ている.シャーレの中に塗料溶出液や塗装板片を入れて、巣材と海水を入れて、30 分ばかり待つ.そして、さっと巣材を洗い流せば、巣がシャーレ面にハッキリ残る.タナイスが元気であれば、たくさんの巣が残る.これまでの試験から、この方法が使えそうなことが分かってきた.塗料性能試験ばかりでなく、海洋における微量物質に対する試験などにも使えるかもしれない.飼育が容易なので、累代飼育等で感受性の異なるいろいろな系統を創ることもできるかもしれない.夢は膨らむのだが、実験時間や人手がなかなか確保できないのが、残念である.
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