ハーモニカの奏法には、パッカリングとタングブロッキングがある.パッカリングは口先を突き出してハーモニカの1穴分だけくわえて単音を出す方法で、ハーモニカを吹く時一般にはこの方法が主流だろう.タングブロッキングはハーモニカをガバリとくわえて要らない音を舌でふさいで必要な音だけ出す奏法で、コツを飲み込むまでは単音を出すのがなかなか難しい.でも、オクターブ奏法やアタック奏法にすぐに移れる利点がある.ふつうは舌で左側をふさぐけれど、舌の動きで右ふさぎと左ふさぎを自在に行えると、いきなり1オクターブ音を飛ばしたり舌先トリルなぞもできるようになる(ちなみに、このあたりのテクは私は未だうまくやれない).
もうずいぶん前になるけれど、私が渋谷にあったブルースハープ教室の門を初めて叩いた時のことである.ARI こと松田先生にどんな音楽をやりたいのか問われて、ジャズやブルースのようなジャンルをやりたい旨伝えると、それなら西村ヒロ先生に付くようにと言われた.その教室ではポップスやカントリーなら松田先生、ジャズやブルースなら西村先生という分け方になっていたらしい.いま思えば、その時が私がタングブロッキングへの道を知らずに選んだ瞬間だったことになる.あとで知ることになったが、西村先生は『タングブロッキングの第一人者』として知られる人だった.成り行きではあったけれど、自然にタングブロッキングからハーモニカを学び始めることになったのである.
始めは音が出しにくくて、大変に厄介であったけれど、ハーモニカがなじんでくると、タングブロッキングは口腔内や舌の微妙な感じが直に音になる感じ、奇妙にアナログな感じ、何となくパッカリングよりも緩くて良いような感じなのである.タングブロッキングで困る点に、オーバーブローがやりにくいこと、高音部が出しにくいことがある.上級者になればタングブロッキングでもこれらが出せるようになるのかもしれないが、私はこのような場合にはパッカリングで吹く.でも、タングブロッキングの方がハーモニカとの密着度が高くて、楽器との一体感が大きいように思う.息もよりストレートにハーモニカに入ってゆく感じがする.タングブロッキングは素敵だ.
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