2008年12月13日土曜日
ラップだったなんて
『俺ら東京さ行ぐだ』という歌謡曲がある.吉幾三がもう 20 年以上も前に歌って大ヒットした曲だ.この曲のカバーがまたヒットしているらしい.なんでも若手のラッパーがカバーして、それに吉幾三自身も協力しているという.これに関連して新聞の日曜版に面白い話が載っていた.そもそもこの曲の誕生は、吉幾三がスランプで体調を崩して病床にある時に聴いたレコードがひとつのきっかけになっているらしい.友人がたまたま持って来た海外のレコードをなんとなく聴いていて、その時の記憶が『俺ら東京さいぐだ』の作曲の時に甦ったのだという.その時のレコードがラップであったらしい.なるほど、聞き返してみれば『俺ら東京さいぐだ』はラップである.あの頃は、私の知る限りでは『ラップ』という音楽は日本国内では一般的ではなかった.泥臭い演歌だと思っていた曲は、海外の音楽と日本の演歌が癒合した日本産ラップのはしりだったのだ.吉幾三がもし病床でラップの洗礼を受けなければ、日本産ラップの誕生はもっと後になっていたかもしれない.私にも少しばかり似た経験がある.十余年前に腰痛で 2 週間ばかりの入院治療を余儀なくされていたとき、ひょんなことから病床でマイルス・デイビスのトランペットの演奏を聴いて、突然ジャズにはまってしまった.それまで、ポップスや歌謡曲にしか興味のなかった私にとっては、ある日突然ジャズが空から落ちてきたような感じだった.新鮮な経験だった.どうも、ひどく深刻ではない病床にある時というのは、心が白紙に近い状況、いろいろな情報を吸収し易い状況を得易い傾向があるのかもしれない.入院の心境を日常生活のなかで作ることができたら、素晴らしいと思う.でも、入院はしたくない.
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