2008年12月4日木曜日
昔のカメ
鳥は恐竜の末裔であること裏付ける化石が続々出てきて、中国は考古学研究の一大拠点となってきたが、今度はカメの祖先の化石が出て来たらしい.現生カメの甲羅の形成過程について、肋骨由来説と皮膚由来説があるらしいが、海に暮らしたと考えられる祖先カメの化石には背中の甲羅がなく、腹側のみが肋骨の発達によって形成された腹甲に覆われていたという.これで肋骨由来説が圧倒的に有力になったようだ.研究者のコメントでは、下から攻撃してくる敵に対してまず腹甲を作って防御したのだろうということだ.現生の海の魚でもいわゆる青魚の背側が青く腹側が銀色なのは、上方からの敵に対しては海面の青、下からの敵に対しては太陽光の反射を模した銀色にカモフラージュしていると考えられている.全身が銀色のヒイラギという魚では腹側を昼間に発光させて下からの敵に対する防御策とするという話を聞いたことがある.古代カメがまず下からの敵に対する防御策をとったということは、上から狙われる可能性がより低かったことを示すのだろうか.興味深いところである.それにしても、腹甲だけに覆われたカメというのは、いかにも滑稽だ.海に進出した哺乳類の中で鯨類はかなり洗練されたフォルムだが、イタチなどから分化してからの歴史がはるかに浅いラッコでは、海面で暮らす生活の仕方も奇妙だし、形もかなり滑稽である.あの可愛らしさは中途半端な適応進化の滑稽さに起因するところが大なのかもしれない.そのような意味では、進化途上の祖先カメはかなり可愛らしい動物であったのかもしれない.
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