2009年10月5日月曜日

海の底に漂う

 筑波大学からはいろいろな広報誌が発行されている.年報や新聞の他に速報性のあるものや先生方のエッセイ的なものを掲載するものもある.
http://www.tsukuba.ac.jp/public/index.html
そんななかに学生生活課による『TSUKUBA STUDENTS』というのがあって 1 年間に 9 号と数回の特集号を出している.名前の通り学生生活に関わるトピックについての記事や学生または先生方からの寄稿を中心に構成されている.先日筑波に出かけた時に,昼食をとりに出かけた学食の出口付近のラックにあった最新号を手にしてみた.近づく学園祭『双峰祭』に関連した記事と別に,体育関係の先生が「筑波に居るなら日常に運動をしなければもったいない」といった内容の文章を載せていた.そこには「空気のきれいな筑波キャンパスは日々のジョギングに向いている」という紹介の一方で「プールも近くにあって利用しやすいからぜひ利用すべきだ」と書かれていて,加えて興味深いコメントがあった.プールでの負荷の軽い長距離水泳は『完全な孤独に浸れる時間』であるというものだ.雑音からは遮断され,交通など危険の心配もない.同じコースをぐるぐると泳ぎ回っている限り,他者に干渉されることもない.外界との関わりを完全に断ってもつことのできる自分だけの思考時間になるという.私も同様な感覚をもつことがある.それは,スキューバ潜水で海底の一ヶ所に留まって海藻の計測を行っている時のことだ.一連の計測ルーチンを進めている時に,ふと計測作業の手を止め,海中に向けて顔を上げると,プールでの水泳時よりももっと研ぎすまされた感覚になる.筋肉を動かしている意識がなく体重もあまり感じないから,意識だけが水中にあるように感じられるのだ.体は海に溶けて,意識だけがクラゲのように海中を漂ってゆく.でも,すぐに我に帰って物指しとノギスの数値を読み始める.

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