2009年10月19日月曜日
つくり笑い
学会の年次大会の開催される北海道に向かうため,羽田空港で学生達と落ち合った.思いのほか皆が早く集まったので出発ロビーで自由時間をつくり,学生たちは空港内の売店などに散り,私は荷物番になった.空港の最下フロアの売店で買っておいた安いおにぎりセット弁当をささっと腹に納めたあと,読書しながら合間に辺りを眺めていた.いちばん近くは東京銘菓を名乗る菓子売りの売店で,同じ会社の異なる銘柄の菓子をふたつ並んだそれぞれ屋台のような構造の店舗で売っていた.向かって左側の屋台担当の売り手は細身の若い男性店員,右側屋台の主は若いがハスキーな発声をしそうな雰囲気の小柄な女性店員だった.男性店員は客が来る時はアルカイックスマイルのような,大きいけれど不思議に引きつった笑いを浮かべて,なんだかうわずった感じの元気で対応していた.客が支払いを終えて遠ざかる途端に我に帰ったように笑みが消える.そして,笑い皺をのばすように顔を動かしている.しばらく見ていたら,客が来る度に幾度となくそれが繰り返されるので,なんだか可笑しくて本に目が戻せなくなってしまった.反して,右の女性は滑らかだった.スイスイと水鳥が静かに水面を動いてゆくようだ.接客の度に自然な笑みが浮かんでは,それがスッと弱まって次の客を迎える.2人の違いが経験の多寡によるのか,仕事に対する興味の違いに起因するのか,本当のところは分からない.でも,左の男性には「ごくろうさん,頑張って」と声をかけたくなってしまった.彼の店でなにがしか買ってあげようか,でも荷物から離れるわけにはゆかないな,などと逡巡するうちに,学生達が戻って来たので,荷物をまとめて搭乗手続きに向かった.
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