ウニの観察会が開かれた.前日に採集した小型のムラサキウニを各人に『マイ・ウニ』として配り,各々大事に観察してもらった.小さなカップにたっぷりと海水を満たしてウニを沈めて,ななめ上から光を当てて実体顕微鏡で観察する.上側にある肛門,下側にある口をよくよく眺めてみる.あちこちで歓声が上がった.いろいろな印象が口からこぼれる.「ウニって,なんて美しいのだろう」,「いろいろな道具が備わっていて,弁慶みたいだ」,「なんだか吸い込まれそうで,宇宙みたいだ」などなど.やがて,「背中に可愛いハートマークがついてます」というコメントがあった.そんなふうに意識して見たことがなかったのだが,確かにウニの肛門の脇にきれいなハートマークが浮き出している.表面には細かな穴がたくさん開いているのが分かる.これは多孔板だ.穿孔板とも呼ぶ.大きなウニだとこんなに目立たないが,マイ・ウニたちの殻が小さい故にいっそう目立つ.ハート形だといちど言われると,他の形には見えなくなってくる.この場所はウニの体内への水の取り入れ口だ.ウニはここから取り入れた水の水圧で管足や叉棘を動かし,運動すると言われている.すなわちウニは水圧を利用して運動するのだ.同じ棘皮動物の仲間であるヒトデもナマコも然りである.筋肉をせっせと動かして暮らしている私たちから見ると,何とも不可思議な生きものたちである.マイ・ウニにはお昼までそれぞれの人間パートナーと付き合って頂き,昼には採集してきたバケツに戻って頂いた.そして,翌日午後にはもといた海に帰って頂いた.潮だまりの真ん中に放たれた小さなウニたちはせわしなく管足を動かして,岩陰を目指して移動していった.
閲覧数ベスト5
-
野鳥というのは、ヒトがある一定の距離以内に近づくと、忽ち逃げてゆくものだと思っていた.カラスもそうだったはずだ.ところが、最近、ずいぶんに近くまで寄っていっても、 なかなか逃げてゆかないものが多い気がしている.1 m より短い距離まで接近しても目が合っても、平気で柵や樹木の梢や...
-
保育園生の息子は朝食の食卓についてもなかなか食べ進まず、些細な事で気がそれては食事半ばで遊び始める.台所が片付かないうえに登園時刻は迫るので、私も女房もイライラしてくる.そんな女房が今朝不思議な言葉を発した.「早くしなさい!ちんだらはんだらすな!」女房は九州の出身でふとした瞬...
-
ナマコの不思議な食事風景を見た.自宅の玄関に、いろいろな生き物を入れては眺めている小型の水槽があって、今はその中に大きさ 20 cm くらいのマナマコが入っている.食用に貰ったのだが、すぐには食べなかったので水槽に入れたまま、ペットになってしまったものだ.眺めていると、赤みを帯...
-
とてつもなく小さな印刷文字を新聞紙面に見つけた.映画の広告の中に埋め込まれた高校生優待や高齢夫婦割引のコラムの中の文字である.スケール付きのルーペで文字サイズを測ったところ、いちばん小さなものは文字の高さが 0.3 mm に満たない.ひとまわり大きな文字でも 高さ 0.5 m...
-
雨の降りしきった先週の朝、出勤のために農学部北門から入構して歩いていたら、ぬれた道路を小さな黄土色のものが這い回っていた. カタツムリに似ているがドングリのような形の薄く繊細な感じの殻を背負っている.見かけたことのない生き物だった.30 個体は居たのだけれど、通勤のために構内を...
0 件のコメント:
コメントを投稿