2009年8月17日月曜日
コシダカウニは美しい
ウニは受精やその後の卵発生を観察するのに理想的な生物だ.入手しやすいうえに放卵と放精を誘導しやすい.種類によって産卵期が異なっているために、対象種を変えてゆけば一年中発生の研究ができる点でも重宝されてきた.下田で実施される臨海実習では春期にはバフンウニを使い、夏期にはムラサキウニを使う.これらは個体数も多く扱いやすいのだ.でも、これらのウニの卵黄には少々色が付いていて光の透過性に劣る.卵発生の観察には理想的には無色透明な卵の方がよい.実はそんな卵を持つウニたちがある.私が忘れられないのはタコノマクラである.大学時代にお茶の水大学の館山臨海実験所を借りて行われた実習で、卵の受精から発生を顕微鏡に張り付くように観察していた.受精の折りに精核が卵核に近づいてゆく様子、卵が規則正しく割れてゆく様子を教科書の模式図そのままの状態で眺めることができた.その感動は今でも忘れない.もっとも、卵割の合間時間が長くなると浜に出て野球をやっていた記憶があるので、真面目な学生ではなかったはずだ.確か同時にスカシカシパンの卵発生も観察し、紫の水玉模様が少々邪魔ではあるものの、こちらの卵もとても綺麗だった気がする.残念ながら、下田の沿岸では、タコノマクラやスカシカシパンをコンスタントに大量に入手して実習に使うことは望めない.ところが、今年になって沿岸でコシダカウニの出現頻度が著しく高くなってきた.このウニはタコノマクラに似て濁りのない卵黄を持つため、発生の観察に好適なのである.以前は磯でバフンウニの 1 割以下の頻度で見られたものが、今年になって潮間帯でも潮下帯でもやたらに目にするようになった.私はこのちょっと小ぶりのウニが大好きである.バフンウニに少し似ているが、殻高がはっきりと高く、丸みがあって愛らしい.また、バフンウニの見てくれが個体によって様々で色もなんだかすっきりしないのに対して、コシダカウニの外観は端正である.すっきりとした黒っぽい帯が美しく五方向に伸びて、なんだか気高く見える.棘を取り去った殻の模様や色合いも実に美しい.生時に黒っぽく見えるゾーンは実体顕微鏡で観察すると叉棘の端が青い蛍光を発していて、そんな秘められた美にも魅せられるのである.このままこのウニの大発生が続くと、夏の実習の主役はムラサキウニからコシダカウニに変わってしまうかもしれない.
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