2009年12月17日木曜日
逆三角めがけて
熱海から東京に向かうこだまに乗った時のこと、N700 系の車両内でトイレに行った.新幹線には男子の小用トイレがあって、大昔の電話ボックスのような窓がついている.仕事鞄を抱えながらなんとか扉を開いて狭い空間に体を押し込め、小用便器に向けての放水を始めようとした.そのとき、便器内部の壁面にマークがあるのが目に留まった.小さな逆三角形が縦に 3 つ並んでいる.なるほどこれをめがけて撃てば、もっとも跳ね返りが少なく、掃除も楽なのであろう.そこで、思いっきり逆三角形を狙い撃ちした.ちょっとしたことではあるけれど,なかなか良い考えだなと考案者を褒めたくなった.
2009年12月15日火曜日
7階の窓から
3 学期は講義のために下田から筑波に通っている.1 限の講義は朝 8 時 40 分からなので、下田から出かけて筑波に前夜泊する. 7 時半にはつくばキャンパスのオフィスに出かけて、講義内容の最終チェックなど準備を行う.冬の早朝のキャンパスはとにかく寒い.下田暮らしに慣れた身には肌に痛い寒さで、手袋とマフラー無しには我慢ができない.人気がないガランとしたキャンパスはよけいに寒々しい.苦行のようなそんな朝だが、空気は澄んでいて明るい.おかげでささやかな楽しみがある.我々が共用するセンタ−教員のオフィスは 7 階にあり,部屋の幅いっぱいの大きな窓が北西方向に開いている.良く晴れた冬の早朝には,ここから富士山が見えるのだ.窓の左の縁ぎりぎりくらい、ちょうど真西の方向に真っ白な三角形が小さく浮かんでいる.右手の真北の方角には大きな筑波山の双峰がそびえている.でも、早朝の壮観が楽しめる時間は短い.1 限の授業が終わって戻ってくる頃には、たいてい富士は姿を隠してしまっている.
2009年12月7日月曜日
フードの水たまり
私のウェットスーツの上着にはフードがついている.生地厚 6.5 mm の冬用両面スキン(表裏の両面が布張りでなくゴム生地)であるため、かなりゴワゴワしている.脱ぎ着は大変に困難で、手首の部分とフードのついている首の部分がとくに細くなっているために、脱ぐ時には裏返ったゴム生地に囲まれて、洞穴のような場所からなかなか抜け出せなくなる.閉所恐怖症の方には耐え難いだろう.力まかせに引っ張ればよさそうなものだが、両面スキンのスーツは裂けやすいので、むやみに力をかけることはできない.しばらく暗いトンネルの中で四苦八苦するのが潜水調査時のルーチンになっている.海から戻って脱いだあと,真水での水洗を終えたウェットスーツはハンガーにかけて干す.表面がゴムのウェットスーツは撥水性が良くて、乾きやすい.半日もすればよく乾いてくる.ゴムは直射日光に長時間さらすと良くないはずなので、いつも早めに取り込む.ところが、表面がすっかり乾いているのを確認してハンガーからウェットスーツを外そうとしたとたん、服や顔にバシャッと水がかかる.ハンガーにかけた状態のフードは上向きになっているために水が溜まりやすいし、蒸発しにくいのである.困ったことに、いつもこの事実を忘れてしまい、何度でも同じことを繰り返す.先日、このウェットスーツを干したまま出張に出たことがあり、1 日はさんで帰ってきた時にまだスーツがぶら下がっていた.乾いているのを確認して取り込もうとしたところ、大量の水を浴びてズボンがビショ濡れになった.どうも、留守中にかなりの量の雨が降ったらしく、ほぼ私の頭の容積に近い量の水を浴びた.さすがに懲りた.次こそは、きっと失敗しない.
2009年12月6日日曜日
金ちゃんヌードルの音
我が家では滅多にカップラーメンを購入しない。先日マックスバリュに出かけた時に『金ちゃんヌードル』が 88 円の特価になっているのを見て,なんだか無性に食べたくなった。ひとり分だけ買って帰ると子供たちにずるいと騒がれるので,家族 5 人分を買って帰った。まあ,だいたいこういう成り行きになるから結果的に割高になって,ゴミが多く出ることもあって我が家庭においては敬遠されるのである。そのような訳で,ようよう買って帰れば,珍しいので子供は喜ぶが,女房には嫌な顔をされる。でも,まあ若干は家事の省略を助けることはできるのだからと説得して,結局日曜の昼食時に食することになった。子供たちはずいぶんと昼食時間を楽しみにして,なんだかちょっとしたイベント気分であった。待ち遠しいイベントは始まるまでが楽しいので,始まってしまえば終わるのも早い。『金ちゃんヌードル旨味カレー』の麺も具もほとんど食べ上げて,スープが容器の高さの5分の1くらいの水位になったとき,縁を持って,円を描くように容器の底を振ってみた。スープに隠れた具がないかをチェックするつもりだった。すると,ジャラジャラと音がした。何か硬い粒が底に残っていたかと調べたが,見当たらない。何度振っても音がする。金ちゃんヌードルはプラスチック容器が2重になっていて,内容器はギザギザになっている。熱さを外容器にじかに伝えない工夫だろう。どうも粘度の高いカレースープがこのギザギザにぶつかる時に音を出すらしい。試しに,スープをほぼ等量の水道水に入れ替えて再び振ってみると,音は格段に小さくなった。その後,女房と子供たちの容器のスープの水位が下がるのを待って,順々に振らせて頂き,日曜の昼下がりをジャラジャラ音で楽しんだ。
2009年12月4日金曜日
朝トロール
大浦湾の朝は湾口から陽が射す.沖を望むと海面がキラキラと銀色に輝いて,まぶしく美しい.快晴の今朝は陽光がことさらに奇麗だった.朝 8 時半から定員 7 人の『あかね』に 4 人で乗り込み,Ta さんの月次トロール採集を手伝った.Ta さんは記録と採集サンプルの処理,操船が Ts さん,Sa さんと私が網の操作だ.船尾からトロール網を広げながら流し,あらかじめ決めておいた距離を曳航する.いちど網が海底に届いてしまえば,網上げまではすることがない.パリッとした青空の下で朝の若々しい光に包まれて,浜を通う新鮮な空気と世間話を楽しんだ.網を入れ,網を上げ,収穫物を容器に移す.2 地点でこのルーチンを繰り返したあと,船は舳先を陸に向けた. 1 時間弱の朝のひと仕事が終わった.
2009年12月3日木曜日
はしゃぐシッタカ
伊豆の近辺では,磯で獲れる円錐形の巻貝を総称して『シッタカ』と呼ぶ.殻の径に対して丈が高いことから,尻高という名を語源にすると聞いている.でも,殻高のウニが『コシダカ』なのに,巻貝だと『シリダカ』なのは不思議だ.シッタカのなかでも最も美味とされるのがバテイラである.このバテイラの牧場づくりに取り組んでいる.牧場というのは,牧草を育成してそれを植食動物に食わせる場所であり,人には利用できない食物を栄養段階ひとつ経ることによって利用可能にする場所だ.ところが『海洋牧場』という言葉を耳にすることがあっても,実際に植食動物の牧場であるものは不思議と見当たらない.一般に海洋牧場というとなぜか大きな生け簀の中で大型魚類を畜養する場所がイメージされる.我々が目指しているのは,字義通り,植食動物を牧草によって育てる海洋牧場である.植食動物がバテイラ,牧草が褐藻類のカジメである.海中の大型ブロックにカジメを植え込むとカジメはそこで根付いて生長する.そのカジメを巻貝類の移動を阻む柵でブロックごと囲って,カジメを育成しながらそれをバテイラに食わせようとするシステムだ.海藻の生長速度と貝の摂食速度のバランスがうまくとれれば,手間のかからない牧場になるはずである.そうすれば,小さなバテイラを柵内に放り込んで放っておくだけで,やがて粒の揃った大きなバテイラを収穫できるはずだ.夏からの数ヶ月で,貝類移動防止柵のついた巨大ブロックを海底に沈め,カジメを植え込んだ.この『牧場』にいろいろな密度でバテイラを放って,海藻の生長と貝の摂食速度のバランスがとれるポイントを求めたい.そのため,今日の午前中にバテイラを牧場ブロックに放ちに出かけた.全ての個体には識別マークをつけて,数段階の密度となるように数を調えた.網袋にブロック単位でまとめたバテイラを入れて,海中の現場に運んだ.それぞれのブロック上の囲いの中で網袋の口を開き,密度コントロールしたバテイラを一斉に解放した.狭い場所に封じ込められていた貝たちは着底するや腹足と触角を思い切りのばして素早く体を起こして這いはじめた.多数の貝たちがいっせいに生き生きと動き始めた様子は,授業から解放されて休み時間に校庭に飛び出してくる子供達に似て,なんだかはしゃいでいるように見えた.海底で一緒に作業をしていた Y 君はこの研究の担当学生なのだが,海から上がってきて潜水器材の片付けをしている時に,全く同じようなコメントをしていた.貝たちの様子はそれほどに生き生きして見えたのである.これから,ちょくちょく彼らの様子を見に出かけることになる.彼らは牧場で元気に暮らしているだろうか.次の時も元気一杯に我々を迎えてくれるだろうか.
2009年12月2日水曜日
歯間ブラシの快感
セミナーの打ち上げの時に,誰かが持ってきた粘度の高い海外の食品を口に入れてモグモグやっていたところ,奥歯の詰め物が取れてしまった.歯のトラブルはここ 10 年遡ってみても記憶が無い.仕方なく,本当に久々に歯科の予約を取って,詰め物を入れ直してもらった.ついでなので,歯の健康診断も受けることにした.とくに素晴らしい健康状態でもないが,目立って悪いところはないというような診断が下された.そして,今後歯茎の健康状態を良くするためのひとつの方法として,歯間ブラシの使用法を教えて頂いた.先端が L 字に曲がった全長 10 センチばかりのブラスチックのスティックの先に長さ 10 ミリ余の微細な針金が飛び出していて,それにブラシ状の毛が生えている.いってみれば,ごく微小な試験管ブラシのようなものだ.これをどのように歯列に差し込んでゆくかを習ったのである.歯と歯の間の基部の方にあるわずかな隙間は,前歯でははっきりしている.しかし,奥の歯では,ほぼ歯茎の張り出しに隠されていた.この隙間に順に歯間ブラシを貫通させてゆくのである.こんなところに隙間があったのかと驚くような場所にブラシが潜り込んでゆく様子を,ミラーで観察させて頂いた.なんだか自分の体のなかの秘境探検のようだ.探検隊がすんなりトンネルを通過できる場所がある一方で,かなり痛覚を刺激される部位もあって,そんな場所では歯間ブラシが血まみれになる.しかし,担当の歯科医師さんによれば,数回繰り返すうちに歯茎が引き締まって出血は止まるとのことだった.数日続けてみたところ,はたしてその通りで,出血の止まったところはブラシ挿入の痛みもなくなった.そうなってみると,この歯間ブラシというものはずいぶんと気持ちがよいのである.慣れてみると体のツボを押されているようなそんな快感をともなってくるのだ.ひととおりブラシを差し込み終わると,歯列が眼を覚ます感じがする.電動歯ブラシに続いて,今年は歯のケアのために気持ちの良いことを,もう1つ覚えてしまったようだ.
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