農学部のキャンパスの近くに中学校があって、校庭でソフトテニス部の生徒たちが練習をしている.夏頃だろうか、近くを通りかかった時に、生徒のひとりの背に「無二の一球」という言葉が見えた.被災地での調査を始めた頃で、どんな調査を行えば最良なのか、幾度となく自問自答していたので、その言葉が忘れられなくなった.現地での調査は時間が限られているので、何もかも行うことはできない.でも、しっかりとあとに残って皆の役に立つようなデータを取らねばならないはずだった.毎回の調査を無二の一球としたかった.もうすぐ1年が経つ.毎月何度も被災地での海中調査に通って来たけれど、私たちの調査は無二のものであったか.そんなふうに振り返ると、反省すべき点は次々に湧いてくる.取り返しのつかないような苛立ちすら、いくつも浮かんでくる.でも、本当の評価は後になってからでないと行うことができないはずだ.私たちにできるのは、いまベストを尽くすことだ.できる限り、ありのままの姿を科学的に刻んでゆくことなのだ.まだまだ、毎度毎度を少しずつ振り返りながら、修正を加えながら、日々が無二の一球となるように、努めるしかない.
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ナマコの不思議な食事風景を見た.自宅の玄関に、いろいろな生き物を入れては眺めている小型の水槽があって、今はその中に大きさ 20 cm くらいのマナマコが入っている.食用に貰ったのだが、すぐには食べなかったので水槽に入れたまま、ペットになってしまったものだ.眺めていると、赤みを帯...
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月曜から始まった 4 泊 5 日の臨海実習が終わった.この実習では、磯の生き物やプランクトンを観察して描いた学生全員のスケッチを、取捨選択せずに編集して冊子にまとめる.編集作業は学生たちが自ら行う.学生たちはその過程で他の人のスケッチを見ることもできる.また、スケッチを切り貼り...
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なんとなく「なぜだろう?」と思っていたことについて、ひょんなきっかけで答えを得ることがある.私は零戦のゼロが何なのか知らなかった.吉村昭の『零式戦闘機』を読んで、皇紀 2600 年の最後のゼロを取ったということを知って、97 式艦上戦闘機や一式陸上攻撃機などの名前の理由にも合...
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下田はワカメとヒジキのタイプ産地である.黒船来航の折りにワカメもヒジキも下田周辺の生物調査で採集して持ち帰られ、下田の標本をもとに学名がつけられたのである.つまるところ、全てのワカメとヒジキの代表格が下田産のものであり、下田こそワカメとヒジキの故郷であるということになる.この事...
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修士論文の中間発表を筑波に聞きに行った.発表のなかにトンボの雄の繁殖戦略に関するものがあり、その話のなかに『無核精子』というものが出てきた.トンボを含む昆虫類のあるグループには精子に有核のものと無核のものがあると言う.精子の存在目的は遺伝情報を卵に運ぶことだと思っていたので、...
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