2010年5月16日日曜日
巣づくり人間
下田と筑波の間の往復で乗る電車には、いろいろな座席配置がみられる.伊豆急線でときどき遭遇するリゾート号や黒船電車では眺めの良い海側に向いて鈍角で開いたV字型にベンチ型シートが並ぶものもある.通勤電車的な横並びの席と対面で腰掛けるボックス席が共存する場合に、私は必ず横並び席に座る.膝頭の位置なんぞ気にしたり、対面の人の拡げる新聞の記事に気が散ったりしなくて済むからである.だいたい1人ぽっちで座るのに、グループが一緒に座れる場所を占拠するのは気が引ける.回転寿司屋にひとりで入ってカウンター席でなくテーブル席に座る勇気を持たない小心者である.しかしながら、乗り込んでくる乗客にはひとりでボックス席を占める方々が実に多い.なかに「巣づくり人間」とも呼ぶべき人々のいることに気付いた.どうも短時間でも周りの環境を自分の嗜好に合わせて改変しようとするようである.良し悪しの問題をおいて、とても興味深い.巣づくりでは、まず鞄や衣類を周りに置いて居住空間を確保し、靴を脱いで足を伸ばし、伸ばした足には膝かけや上着を掛ける.カーテンやブラインドをいじり、窓ぎわには飲みものや食べ物を並べる.それから何がしか食べ飲みしながら雑誌を読みふけったり、パソコン作業を始めたり、あるいは化粧をしたりする.なんだかそこの空間だけその人のもつ色合いに染まって見えるようになるから不思議である.対面型ボックス席に限らない.新幹線の座席でも、なんだか空間を自分のもつ色合いに変えようとする人、変えることの出来る人がいるように思う.海底生物の世界を思えば、海底の環境になんとか自分を馴染ませようとする生きものたちと、すみ場所の環境をなんだか力づくで好みのままに作り変えようとするものがいる.後者を生態学のはやり言葉で「生態系エンジニア」と呼んでいる.「巣づくり人間」は人間世界の生態系エンジニアなのだ.
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