東北大学農学部の雨宮キャンパス内は緑が濃い.巨木から小さな灌木まで、なんだかやたらにいろいろな樹種がある.すっかり調べ上げるのは難しそうだ.なかで、分かりやすいのはトチノキだ.それでも、最初はホオノキだと思っていた.栃木県出身の院生 M 君が「あれはホオではありません.栃木県のトチです」とアピールしたので、樹木図鑑を調べた.そして、正しい主張であることが分かった.名前がなんであれ、私はこの樹にずいぶんと癒されている.わが研究棟の2階にはベランダ状通路がある.そこの手すりに寄りかかって南側を眺めると、向こう側の研究棟に沿うようにドーンとそびえるそのトチノキがある.
垂れ下がった手のひらのような緑葉がきれいに並んでいる.葉の垂れ具合は、むく犬の垂れ耳のようだ.ぼんやり眺めているだけで、疲れ目がほぐれ、慌ただしさに揉まれる心が軽くなる.樹名を教えてくれた M 君によれば、秋を過ぎるとこの濃く茂った葉どもがことごとく落下して、樹の枝だけになるという.なんとも潔いことだ.ちょっと調べてみたところ、手のひらのように広がった葉のかたまりは掌状複葉というひとつの葉で、落葉の時には葉柄ごとポロッと落ちるらしい.葉の落ちたトチノキの樹容もきっと見事なものだろう.楽しみだ.M 君はきょう、公務員試験の合格が決まった.このトチノキの緑は彼にとって、このキャンパスで最後のものになるのだな.おめでとう.
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