2009年9月25日金曜日
フジツボの足にまねかれた
海の生き物について「こんな本があれば良いな」と思うような本が実際に出版された時,小躍りするくらい嬉しくなると同時に,同業者としては「ああやられたな」という気持ちがわずかに胸の中に浮き上がる.近頃出た本の中でそんなふうに感じたのが,岩波科学ライブラリーシリーズの 1 冊として発刊された『フジツボ:魅惑の足まねき』である.思い切り遊びの要素が詰まっている.ページのすみにパラパラ漫画があったり巻末にフジツボのペーパークラフトが付されていたりする.文章はウィットに富んでいて,読んで楽しい.知名度の低い生きものを一般社会に紹介しようとするのは随分と難しい.科学的な正確さを保ったままで柔らかく紹介することがなかなかできない.でも,この本はそれに成功していると思った.楽しく,美しく,科学的である.「ああ,私もこんな本を作ってみたいなあ」と思っていたから,国際甲殻類学会の閉会式の会場でフジツボ研究グループの H 氏にそんな話をして「いい本だねえ」などと嘆息していたら,「著者がすぐ後ろに居ますよ」と言われ,びっくりした.振り返ると著者の K さんが笑っていた.どうもフジツボの足にまねかれたらしい.
登録:
コメントの投稿 (Atom)
閲覧数ベスト5
-
私は本屋に入って手ぶらで出て来ることがほとんどないうえに、本を捨てることも滅多にない.研究関連の本はとくに発行部数が少なく、古書店で安くなることもなかなか期待できない.書店に姿のあるうちにとりあえず捕まえておく.だから溜まる一方だ.決して読書速度が速いわけではないので、未読本が...
-
今日の午前中は A 大学の臨海実習でプランクトン採集を行った.午前9時に船着き場から研究調査船『つくば』( 18 t、30 人乗り) に乗船した.下田沖約 2.5 km の採集地点に向う途中、2 km ばかり進んだあたりの海上をアゲハチョウが一頭舞っていた.モンキアゲハかナガサ...
-
下田と筑波の間の往復で乗る電車には、いろいろな座席配置がみられる.伊豆急線でときどき遭遇するリゾート号や黒船電車では眺めの良い海側に向いて鈍角で開いたV字型にベンチ型シートが並ぶものもある.通勤電車的な横並びの席と対面で腰掛けるボックス席が共存する場合に、私は必ず横並び席に座る...
-
農学部のキャンパスの近くに中学校があって、校庭でソフトテニス部の生徒たちが練習をしている.夏頃だろうか、近くを通りかかった時に、生徒のひとりの背に「無二の一球」という言葉が見えた.被災地での調査を始めた頃で、どんな調査を行えば最良なのか、幾度となく自問自答していたので、その言葉...
-
どうも動物を飼わずにはいられない気質のようである.よくよく考えてみるとこの 30 年間、たえず何かしら生きものを飼い続けてきた.研究の一部であったこともあるし、子供のためのペットとしてのこともある.途切れたことがない.魚、カニ、ヤドカリ、エビ、カエル、ワレカラ、タナイス、ウニ、...
0 件のコメント:
コメントを投稿