2009年9月25日金曜日
フジツボの足にまねかれた
海の生き物について「こんな本があれば良いな」と思うような本が実際に出版された時,小躍りするくらい嬉しくなると同時に,同業者としては「ああやられたな」という気持ちがわずかに胸の中に浮き上がる.近頃出た本の中でそんなふうに感じたのが,岩波科学ライブラリーシリーズの 1 冊として発刊された『フジツボ:魅惑の足まねき』である.思い切り遊びの要素が詰まっている.ページのすみにパラパラ漫画があったり巻末にフジツボのペーパークラフトが付されていたりする.文章はウィットに富んでいて,読んで楽しい.知名度の低い生きものを一般社会に紹介しようとするのは随分と難しい.科学的な正確さを保ったままで柔らかく紹介することがなかなかできない.でも,この本はそれに成功していると思った.楽しく,美しく,科学的である.「ああ,私もこんな本を作ってみたいなあ」と思っていたから,国際甲殻類学会の閉会式の会場でフジツボ研究グループの H 氏にそんな話をして「いい本だねえ」などと嘆息していたら,「著者がすぐ後ろに居ますよ」と言われ,びっくりした.振り返ると著者の K さんが笑っていた.どうもフジツボの足にまねかれたらしい.
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