2008年11月25日火曜日

恵比須島の中潮の磯にて

 須崎の恵比須島に朝から出かけた.平日磯観察会ということで、海洋自然塾の中で旅館業などを営んでいて休日に磯観察会に参加できない人のスキルアップのつもりで資料を準備して出かけた.しかし、現場に着いてみると、予想はしていたものの哀れなコンディションだった.雨は上がって天候は良くなりつつあったものの晩秋の中潮で潮は引かず、風がびゅんびゅん吹いて高波が岩場に押し寄せる状況で、なんとか観察会ができそうな磯は辛うじて海面から露出している西側の 5−6 坪しかなさそうな場所のみだった.しかも、そこでさえ高潮位であるためにめぼしい動物も海藻も目につかない状態だったのだ.塾長の K 氏との下見の段階では中止も考えたのだが、下見を終えて集合時間をちょっと過ぎた頃に集合場所に戻ってみると、10 名以上の参加者の方々が既に集っていた.何だか引っ込みがつかない状況になってしまったので、いずれにしても当初予定をいくばくかでも果たそうと K 氏と腹をくくった.私にとっては、今回の参加者の半数が地元須崎の民宿の経営者の方々であったことも腰の引けてしまった理由のひとつだった.準備してきたスキルアップ的な内容と民宿の方々の希望とがうまく噛み合ないだろうと思ったからだ.ところが、実際に観察会をやってみたら、心配は全くの杞憂だった.須崎にやってくる修学旅行などの教育旅行の折りに子供たちを磯に放つだけでは何も意味がないから、少しでも磯の生物についての蘊蓄を語れるように学びたいという民宿の方々は、高齢の方もあったけれどみなとても柔らかな感性をお持ちだった.こちらの生き物話もよく聞いて下さったし、須崎でのそれらの生き物の呼称や料理法、美味な時期や不味な時期などいろいろなことを話して下さった.それらの情報のやり取りが滑らかで、温かで、とても心地良かった.皆さんが狭い磯からいろいろな生き物を一生懸命見つけてきて下さったことも心に沁みて嬉しかった.通り一遍の生き物の知識の一方通行の伝達だけではなくて、地元の人々の生活のなかにある生き物のあり様を私たちももっと学んで、それらも含めた大きな生き物のイメージを、もっと広い視野から伝えられるように努めなければいけないと、そんなふうに学んだ磯の観察会となった.

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