2008年11月3日月曜日
絵本:トマトさん
年中向け『こどものとも』の一冊として届いたので子供に読み聞かせてやったのだが、その表現力の力強さ、もの凄さに一発でノックアウトされて、私の方が夢中になってしまった絵本が『トマトさん』(田中清代作、福音館)である.夏の日に太陽に灼かれたトマトが、小川で水浴をしたいのだが自力では動けず、動物たちの助けを得て小川に転がり込むという話で、動物たちが力を合わせてトマトを押し転がすところは『おおきなカブ』に似ているが、この作品の放つオリジナリティーは物語よりも絵そのものにある.日に灼かれて辛そうなトマトさんの顔、小川に飛び込むトマトさんのドアップの顔などは、ほとんど不細工なまでにリアルっぽくて、ついついトマトには本来顔が付いているものだと、錯覚してしまいそうだ.画面から飛び出してきそうな絵の大きさと動きと勢いには、はじめは少し身を引いてしまいそうになる.トマトを助ける動物たちが、いずれも擬人化されているのに、なぜだかみんな妙に自然な感じであるのも可笑しい.ひとつひとつの動物が、細部まで丁寧に描き込まれているために生じるのだろうか.不思議な感覚である.我が家の本棚にずらりと並んだ子供の本の中で、ついつい手を伸ばして見入ってしまい、そのたびに涼やかで爽やかな気持ちになる.私の清涼剤である.
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