2009年5月19日火曜日

鼻頭角のイカ

 台湾本島の北岸に沿って藻場を調査して廻った.基隆を起点に東に進んで行くと北東向きに細長く突き出した岬がある.『鼻頭角』という地名のここは岩場の岸寄り沿岸をコンクリート張りにしてあって、観光客が歩きやすくなっている.大きな落差で海に突き出した奇岩の様子を足元を気にせずにぐるっと眺めてまわることができるわけだ.そのコンクリート通路の途中に不思議なオブジェがあった.3 つ以上は並んでいたと思うが、いずれもほとんど同じ姿勢で型どられた『イカ』だった.頭部と足を持ち上げて不思議なアクションをとろうとしている大きなイカだ.ところが、このオブジェにはどうもおかしなところがある.イカが泳いで移動するとき、漏斗と呼ばれる短い管状の突起を下にしているのが普通だ.進行方向前側にある胴はもう少し真っ直ぐか、むしろ上をやや凸にして反るものである.それを考えるとこのイカは完全に背腹を逆に取り付けられている.つくりがとてもリアルなだけによけいに奇妙な感じがする.体をヒラリと反転させながら水中を突き進もうとするその一瞬を捉えたダイナミックな作品だ、とでも解釈しておこう.

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