2008年10月9日木曜日
赤い光
夕方にジャーナルゼミがあって、S 君が BMC Ecology という雑誌に掲載の興味深い論文を紹介した.ふつう海の中では水深が 10 m を超えたあたりから太陽光のなかの赤色成分がほとんど届かなくなり、深くなると青色と緑色から、やがてほとんど緑色成分の光に満たされた世界となってしまう.赤色というものがない世界なので、深所の魚たちは赤色を見る必要がないと考えられていた.ところが、魚の種類によっては海に届く青や緑の光を浴びて赤い蛍光を発しているという.しかもそれらの魚の近似種間では赤い光のパターンが違っていて、種間識別などにも使われているらしく、網膜に赤い波長帯に感度のある細胞も見つかっているらしい.派手な色の光を放てば捕食者にも居場所を知らせることになる.赤色は遠くまでは届かないので、控えめに発光して近隣の個体との信号交換に使うのかもしれないという.魚以外にも海の中の無脊椎動物には、サンゴ類、海綿類、ゴカイ類ほか赤色蛍光を発しているものがけっこう多いそうだ.むかし生物発光の研究をかじり、海の生物の発光原因についてあれこれ考えていた身としては、また視界の開けるような気がした.折りも折り、オワンクラゲの発光研究がノーベル賞を射止めた知らせが巷を流れた日のゼミだった.
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