2009年6月30日火曜日

私はコケギンポ

 先日、伊豆海洋公園 (IOP) で潜水調査を行った.海から上がった後で受付あたりに並べられている海の生きものグッズを眺めていた.キーホルダーやステッカーやぬいぐるみ、フィギュアなど見ていて楽しいし、あれもこれもと欲しくなってしまう.でも、我が家の家計は苦しいのだから、ひたすら我慢である.そこへ IOP スタッフの H さんが次週に新入荷予定のグッズの写真と見本をもってきて見せてくれた.そのなかでとても親近感を覚えるキャラクターがあった.なんだか潜っているときの私にそっくりの顔なのは、コケギンポだった.ぬいぐるみやシールがあるようだ.発売元のホームページも見つけることができた.
http://www.sea-shell-bin.com/SHOP/SR035.html
次回 IOP に潜りに出かける時には、家計に特別予算を組んで、関連グッズを買いあさることにしよう.

2009年6月26日金曜日

かいめんボブ

 うちの子供たちに大人気だった『スポンジボブ』という番組が最終回を迎えた.このアニメの主人公であるボブは体が直方体の海綿で、ふんどしのようなパンツをはいていて、ヒトデを友として海底のパイナップルの家に住んでいる.海の生き物たちは徹底的にデフォルメされていて、ほとんど原形をとどめていないし、ほとんどは荒唐無稽なドタバタ喜劇なのだが、それらのことは措いても海綿が主人公であるということは画期的だと思う.バラバラにされて他の生き物と混ぜられたのちに再び元の形に再生されるシーンなぞもあって、若干は本物の海綿らしいところもある.なんにしても 海の中の海綿という地味な生き物に子供たちが興味を持つきっかけになれば、こんなアニメも素敵だと思う.ただ、日本語タイトルが『スポンジボブ』なので、子供たちは『洗濯用のスポンジ』が主人公だと思っている.洗濯スポンジのもともとのルーツが海綿にあるとはいえ、ここはアニメの題名 を『かいめんボブ』にしてほしかった.私の知る限りで海綿が主人公として出てくる物語はイタリアのアレッサンドロ・ボッファによる『おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ』だけである.この奇妙な物語の中では、主人公であるヴィスコヴィッツがいろいろな動物に転生しながら生きる意味について考えてゆく.その動物の中の一つに海綿があった.こちらのほうが海綿の暮らしをリアルにとらえていて、海綿としての暮らしを実感できる内容だった.岩に張り付いてプランクトンを吸い取って暮らすというのは、陸上の動物には見られないライフスタイルである.日々忙しくタテにヨコに移動して暮らす我々が海綿たちのそんな暮らしに思いを馳せてみれば、世事の見方も少々変わってくるはずである.

2009年6月25日木曜日

映画広告のマイクロ文字

 とてつもなく小さな印刷文字を新聞紙面に見つけた.映画の広告の中に埋め込まれた高校生優待や高齢夫婦割引のコラムの中の文字である.スケール付きのルーペで文字サイズを測ったところ、いちばん小さなものは文字の高さが 0.3 mm に満たない.ひとまわり大きな文字でも 高さ 0.5 mm に満たなくて、既にこのサイズで肉眼での解読はほとんど無理である.高齢夫婦優待はどちらかが 50 歳以上を対象としていたから、老眼だとまず広告コラムの発見からして難しいだろう.最小文字に至ってはほとんど活字がつぶれていて、ルーペで拡大しても判読が難しい.一万円の紙幣に印刷された偽造防止のための文字をルーペで調べてみたところ、一番小さな文字の高さが 0.2 mm ばかりだった.そのサイズにせまる極小の文字が新聞に載っているというのは、不思議である.ここまで小さな文字を載せるのには何か秘められた目的があるのだろうか.

2009年6月24日水曜日

金色リード

 愛用している Hohner のBlues Harp MS (Key: C) の第 2 オクターブの D が下がってしまった.吹きはじめの頃には吹き加減が分からなかったせいもあって良く音が下がっていたものだが、近頃は前ほどはハーモニカのリードに負担をかけることが無くなったためか、リードの皆さんがご機嫌に働いてくれていた.まあ、音下がりも久々のことなので仕方がない.ホイホイ新しいものを買える財布事情でもないので、リードを削って音を調整することにした.分解してリードプレートを取り出すと、なんだかんだ言ってけっこう汚れが溜まっている.こびりついた垢のようなあるいは錆のような汚れをひとわたり削り落として、削りくずを吹き飛ばしたあとで、リード削りに取りかかった.いじるべきリードをよく確かめて、少し浮かせた状態で裏に薄板を挟み込んで固定する.棒ヤスリを使って先端付近を斜め方向にゆるゆると削っては、音を出して効果を確かめてみる.なかなかはかどらなかったが、微妙に少しずつ音が上がっていって、やがて D らしい D になった.気がつくと削ったリードだけが金色に美しく輝いていた.あんまり奇麗だったので、キー調整のご褒美をもらったようで、なんだか嬉しくなってしまった.

外浦アマモ場のこと

 昨年下田市外浦におけるアマモ除去が行なわれてから、まる 1 年が経過した.海水浴の適地として有名なこの砂浜海岸では、10 年前からいきなり生息域を拡大して繁茂したアマモを水産学的に重要と考えて保全するか、観光を重視して海水浴客のために取り除くかというところが論点となり、成り行きが注目された.結局、地元住民の判断は昨年の夏の海水浴シーズン前に全てのアマモを根こそぎ除去するというところに結着した.この経緯についてはいくつかのテレビ番組で取り上げられ、それらの映像を私も筑波大学の環境倫理学概論の講義でも取り上げて論考のための題材としてきた.1 年経って振り返ってみて、それらの番組名などを私もしっかりとは把握していなかったことに気づいたので、改めて調べてみた.
1)TBS 2008 年 6 月 8 日放映 
 番組名:噂の!東京マガジン『海水浴シーズンの問題:海草アマモ大量発生に住民困惑』
2)静岡第一テレビ 2008 年 6 月 11 日放映 
 番組名:静岡◯ごとワイド!News リアルタイム静岡 水曜特集社会部発『アマモ論争に揺れる海岸』
3)NHK 静岡 2008 年 6 月 13 日放映
 番組名:たっぷり静岡きょうの特集『アマモで海の環境を考える』
番組によって取り上げ方が微妙に違っていたのだが、この問題には以下の 2 つの主要素が絡み合っている.
1)アマモ発生の原因が分からない
2)アマモに対する対処の考え方に立場による違いがある
しかし、1が解明されれば2も変わってくる.研究者としての立場からは、アマモ発生の原因究明が先決だと思う.しかし、悠長なことを言っていられないのが地元住民である.私はあくまで地元住民が快適に暮らせる環境が守られることが大切だと思う.それは好適な自然環境の中で豊かに暮らせることで、豊かにというのは自然環境の素晴らしさの享受と共に経済的な豊かさも意味する.したがって、海水浴客誘致のためにアマモを除去することも致し方ないと思う.しかし、除去によって環境悪化が生じるとすれば話は別である.そのような場合には潜水による上部のみの刈り取りの方が有効であったのかもしれない.いずれにしても原因が分からないのだから厄介である.そのような意味では、まず全て除去して様子を見てみようという地元住民の考え方は間違ってはいないと思う.私自身は、アマモ繁茂の原因についてはほぼ以下の4つにしぼられると考えている.
1)人工構造物による海流変化 
2)排水による富栄養化 
3)地球温暖化など大きな環境変化の影響 
4)偶発的進入と一時的な生育環境の適合による群落の定着 
今後、除去による環境悪化の影響が予測されないのは、1、3、4である. 
一方、悪化するなら原因は2であろう.アマモ場の復活があるとすれば、1−3が考えられる.今回全部の除去という結果になったが、今後のモニタリングによってアマモ発生の本当の理由を知ることができるかもしれない.

2009年6月23日火曜日

かがくのともにはさまれて

 7 月から書店の店頭にならぶ福音館『かがくのとも』 8 月号は『しおだまり〜さわってごらん!いそのいきもの』という絵本である.色彩あふれる磯の生き物たちがぞろぞろ出てきて楽しい本だ.『かがくのとも』には毎号こども や父兄向けの『絵本のたのしみ』という小冊子が挟み込んであって、絵本作者のプロフィールや作者から読者へのメッセージが載っている.加えて絵本の内容に関連した小文や、ちょっと 楽しいミニ知識が掲載されたりする.この差し込み小冊子に今号は私の小文と写真 1 枚、絵が 1 枚掲載された.見開き 2 ページの磯観察入門的な内容で、写真は磯観察の道具を撮影したもの、絵は私が締め切りに追われつつ描いたものだ.小さいけれど絵が載ったことが嬉しい.ささやかながら、こっそりと絵本内デビューを果たすことができたのである.

2009年6月22日月曜日

水槽のなかのクモ

 自宅の玄関に置いた 30 センチ水槽には、現在マナマコとイセエビとケブカオウギガニという長期滞在者に加え、先週末に息子がつかまえてきたイワガニとヒライソガニとイソヨコバサミが起居している.3 年以上使っていた外掛け式の小型外部濾過ポンプが 6 月に入ってついにダウンしたため、新しいものと交換した.同時に水槽内もすっかり掃除したため、水槽内が明るくすっきり見えて気持ちがよい.手前から水槽の裏側までがはっきり見通せる.夕食の帰宅時にふと水槽を見ると、ナマコのすぐ横に両脚の差し渡しが 5 cm くらいの小型のアシダカグモが居た.水の中に並んでたたずんでいるように見えたが、そんなわけはない.奥側のガラスの外側に張り付いているものが中にいるナマコと並んで見えたに過ぎない.しかし、水槽の周りではアシダカグモを見かけることがよくある.なぜだろう.水槽の灯りに集まってくる夜蛾などを襲うためだろうか.水槽の中にいる動物たちの動きに反応して思わず寄って来るのだろうか.それとも、水槽内の俘虜であるカニたちに哀れみと親しみを覚えて訪ねてくるのだろうか.

2009年6月13日土曜日

ワレカラのテレビ出演

 ワレカラとコンブノネクイムシが 5 月 4 日と 11 日(再放送)に TBS-BS に出演した.私自身と制作中のワレカラ絵本も登場した.水中カメラマン中村宏治氏の『発見!平成・海の細道』という伊豆周遊潜水紀行番組で、4 月上旬に取材を受けて、一緒に潜ったり顕微鏡観察をしたりしたものである.もっとも、悲しいことにわが家では BS-TBS を見られないため、この時期になって制作会社が送って下さった番組 DVD をやっと見ることができた.コンブノネクイムシのお披露目も嬉しかったが、ワレカラ絵本が大きくフューチャーされて、なお嬉しかった.海の中の小さく可愛らしい生き物たちに光の当たるきっかけになるとよい.そして、願わくばワレカラ絵本出版への契機にならぬものかと少しだけ期待する日々である.

TBS-BS『発見!平成・海の細道』
http://www.bs-tbs.co.jp/app/program_details/episode/KDT0901200

2009年6月8日月曜日

ヤコウチュウの帯

 水深 10 m での今日の海底水温は 18.8 ℃ で、思ったよりも水を冷たく感じた.海底での小一時間の計測作業を終えてから、学生に頼まれていた海藻の採集を 5 分ばかりで済ませた.レギュレーターがフリーフロー気味でマウスピースからぷつぷつとエア漏れしていたため、エアに余裕がある間に作業を終えられたことは、それだけでもささやかに嬉しかった.フッと気が抜けた感じで、T さんの待つ船外機付きボートめがけてゆるゆると浮上していった.視界のきく範囲は 5 m を越えるが、遠くは濁ってぼんやりと見える.海面が迫ってくると、何やらふだんと違うものが晴れた空を背景に透けて見える.下から眺める海面は海の天井のような感じだが、そこには白よりもやや桃色がかって 50 cm よりも幅広そうな帯が幾本もたゆたいながら流れている.さらに近付いて見ると、それは微小な粒からなっていて海面直下にモヤモヤと揺れていた.ヤコウチュウの大量発生だ.上から海面を見下ろせば、もっと濃いピンク色に見えることだろう.初夏に海水温が急上昇したときなどに大量発生することはよくある.毎年 1 回は目にするイベントだが、海の中から眺めたのは初めてだった.今夜は波打ち際がさぞ奇麗に光っていることだろう.仕事帰りにちょこっと覗きにいってみようか.

2009年6月2日火曜日

BB 弾拾い

 自宅近くの砂浜で地元の中学生たちが BB 弾を乱射して遊んでいたらしい.うちの下の息子をめがけて弾を発射した小僧も居たらしく、女房が血相変えて文句を言いに行った.上の息子の調査報告によれば、数千発の弾が浜辺に散乱しているという.次の日うちの息子どもは空き瓶を抱えて BB 弾拾いに向かった.うちでは BB 弾はリサイクルされる.浜は奇麗に掃除されて、BB 弾はわが家の庭で繰り返しお役に立つ予定である.そんなこんなで、自分の小学生時代を思い出した.銀玉デッポウを持って野山を駆け回りながら、乱射していた記憶がある.友達との打ち合いもよくやっていた.でも、見知らぬ小さな子に向けて打つようなことは決してしていなかった.BB 弾を打ちまくりたい中学小僧の気持ちを私は女房よりよく分かると思うのだけれど、最低限のルールは守ってほしいと思った次第である.

2009年6月1日月曜日

台湾の紙ナプキン

 台湾で円卓を囲んで食事をするとき、最初当惑したことがあった.貝殻や魚の骨など食事の時に生じる食べ殻を置く場所がなく、器のスペースがすぐにふさがってしまうのだ.もっと皿数が多いか皿サイズが大きければ良いのにと思っていたのだが、周りの様子を見ていると、多くの人が食べ殻を食卓の上に直に積み上げている.食卓にビニールがかけてあったり、テーブルクロスが使い捨てになっていたりしたのは、食卓を片付けるときの便利のためだということに気がついた.食事が進むにつれて皿の脇の辺りがだんだん汚れてくるし、骨はずしなどに手を汚すこともしばしばで、そのうえ辛いものや熱いものを食べる時には顔から汗が噴き出した.そんな折りにはたいていピンク色の紙ナプキンの束が円卓の上を廻ってきた.『巧聲』という名のこの紙ナプキンには、あちらこちらで随分お世話になった.それにしても、この名前はどんな意味を持っているのだろうか.ちょっと気になるところである.

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