2009年6月24日水曜日

外浦アマモ場のこと

 昨年下田市外浦におけるアマモ除去が行なわれてから、まる 1 年が経過した.海水浴の適地として有名なこの砂浜海岸では、10 年前からいきなり生息域を拡大して繁茂したアマモを水産学的に重要と考えて保全するか、観光を重視して海水浴客のために取り除くかというところが論点となり、成り行きが注目された.結局、地元住民の判断は昨年の夏の海水浴シーズン前に全てのアマモを根こそぎ除去するというところに結着した.この経緯についてはいくつかのテレビ番組で取り上げられ、それらの映像を私も筑波大学の環境倫理学概論の講義でも取り上げて論考のための題材としてきた.1 年経って振り返ってみて、それらの番組名などを私もしっかりとは把握していなかったことに気づいたので、改めて調べてみた.
1)TBS 2008 年 6 月 8 日放映 
 番組名:噂の!東京マガジン『海水浴シーズンの問題:海草アマモ大量発生に住民困惑』
2)静岡第一テレビ 2008 年 6 月 11 日放映 
 番組名:静岡◯ごとワイド!News リアルタイム静岡 水曜特集社会部発『アマモ論争に揺れる海岸』
3)NHK 静岡 2008 年 6 月 13 日放映
 番組名:たっぷり静岡きょうの特集『アマモで海の環境を考える』
番組によって取り上げ方が微妙に違っていたのだが、この問題には以下の 2 つの主要素が絡み合っている.
1)アマモ発生の原因が分からない
2)アマモに対する対処の考え方に立場による違いがある
しかし、1が解明されれば2も変わってくる.研究者としての立場からは、アマモ発生の原因究明が先決だと思う.しかし、悠長なことを言っていられないのが地元住民である.私はあくまで地元住民が快適に暮らせる環境が守られることが大切だと思う.それは好適な自然環境の中で豊かに暮らせることで、豊かにというのは自然環境の素晴らしさの享受と共に経済的な豊かさも意味する.したがって、海水浴客誘致のためにアマモを除去することも致し方ないと思う.しかし、除去によって環境悪化が生じるとすれば話は別である.そのような場合には潜水による上部のみの刈り取りの方が有効であったのかもしれない.いずれにしても原因が分からないのだから厄介である.そのような意味では、まず全て除去して様子を見てみようという地元住民の考え方は間違ってはいないと思う.私自身は、アマモ繁茂の原因についてはほぼ以下の4つにしぼられると考えている.
1)人工構造物による海流変化 
2)排水による富栄養化 
3)地球温暖化など大きな環境変化の影響 
4)偶発的進入と一時的な生育環境の適合による群落の定着 
今後、除去による環境悪化の影響が予測されないのは、1、3、4である. 
一方、悪化するなら原因は2であろう.アマモ場の復活があるとすれば、1−3が考えられる.今回全部の除去という結果になったが、今後のモニタリングによってアマモ発生の本当の理由を知ることができるかもしれない.

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