2009年10月2日金曜日
ウニを手探り
明日の自然観察会は『ウニ』がテーマだ.ふつうウニの実習というと発生観察が主だが,明日の実習では外部形態の観察をじっくりと行う.誰にでもなんとなくウニについての既成のイメージがあるようなのだが,実のところそのイメージははっきりとした形をもったものでも正確なものでもないことが多いようだ.実習では,まずは管足の存在に気付いてもらい,次に口と肛門の位置を調べて,その形状を実体顕微鏡で観察する.そして叉棘や骨片の観察へと進んでゆく.もちろん放卵と放精の実験も少しだけ行う.数個体解剖して,顎の構造なども調べてみる予定だ.顕微鏡を駆使して観察することにより,ウニが本当のところはどんな生き物なのか,その具体的なイメージづくりを目指したい.さて,その観察会に用いるウニを採集するために,午前の干潮時前に磯に出かけた.探すのは小さなウニだ.実体顕微鏡下での観察には,小さなウニの方が便利なのである.抱卵放精実験に使う大型のウニは既に採集してあった.ところが雨が降っていたため,潮だまりの水面を雨粒が叩いて水の中を覗きにくい.干潮時刻にさしかかっていたので,グズグズしていると潮が上がり始めてしまう.そこで,手探りで探すことを思いついた.潮だまりの内側に向かって張り出した岩の裏をそっと指先で探ってゆくのである.磯には危険な生物なども居ると言われているから,誰にでも勧められる方法ではない.でも,これはかなり有効だった.覗きこむことのできない岩の裏を用心深く探ってゆくと,ウニと巻貝の存在を確認することができる.根気よく繰り返すうちに,ムラサキウニとバフンウニを探り当てることができるようになった.そして,殻の丸みの違いからバフンウニとコシダカウニを区別することもできるようになった.おかげで,かなり効率よく3 種の小型ウニを採集することができた.よく考えてみると,ふつう磯採集の時に使う感覚は限られている.海藻採集で現場同定を行う時には,嗅覚や触覚を使うこともある.しかし,動物採集のときはほとんどは視覚に頼っている.次の磯採集の時には,視覚以外の感覚も駆使して臨んでみることにしよう.
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