砂粒の間から顔をのぞかせているのは、ノルマンタナイスのオスだ。アンテナを V 字に伸ばして、大きなハサミを前に構え、黒ゴマっぽい眼で外を眺めている。ノルマンタナイスは『タナイス』の仲間で、ヨコエビやワレカラやフナムシなどを含むフクロエビ類という小型甲殻類グループの一員である。このオスの体の大きさは 3ミリくらいで、砂粒の塊は彼が自分で造った巣である。巣の全体は筒状で、中のトンネルに体を潜らせている。巣材は砂粒に限らず、泥や海草の破片など適当な大きさや材質のものであれば何でも結構だ。自分の出す粘液を上手に使って、ものの30分ばかりの間に巣造りする。実験室で1匹のノルマンタナイス君を海水の入った小容器に入れて、極細粒のガラスビーズを少量与えてやる。すると、まもなく美しいトンネルを造ってくれて、その中で動きまわる様子がほんのり透けて見える。
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