2011年2月13日日曜日
本の背が声をかける
私は本屋に入って手ぶらで出て来ることがほとんどないうえに、本を捨てることも滅多にない.研究関連の本はとくに発行部数が少なく、古書店で安くなることもなかなか期待できない.書店に姿のあるうちにとりあえず捕まえておく.だから溜まる一方だ.決して読書速度が速いわけではないので、未読本が積み重なってゆく.積ん読が加速してゆく.いずれもとっても読みたい本たちなのだが、容易に順番が回ってこないうちに、ずいぶんと変色したり、本棚の奥の湿ったところなんぞにあるとカビが生えたりゴキブリの糞攻撃に曝されたりする.でも、仕事合間や家でごろっと転がった時なぞに、なんだか本の背に呼ばれるように思うことがある.いまこのタイミングで私を手に取りなさいと、声をかけられる.そんな時は、ふと手に取ったものが、その瞬間にとても必要な情報をたっぷりジューシーに含んでいて、私の中の読書畑の乾きを潤してくれる.なんとなく、ゾロゾロと本の背が始終目に触れていることがとっても大事な気がする.何もかも電子書籍に変わってしまったら、本の背との密やかな会話もなくなってしまいそうだ.何もかもが実体のないあぶくの様なものに変わってゆく世界には、容易についていけそうにない.
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