2010年1月24日日曜日

エレベーターのボタン

 日常のごく小さなことがらの中に、フッと敗北感があったり、ときにはささやかな優越感があったりする.筑波にある私たちセンター教員のオフィスは 8 階建て建物の 7 階にある.たいていは 1 階からエレベータに乗ってオフィスに向かう.1 階から同乗する人も途中階から加入する人も、目標階はたいてい 6 階以下である.なぜならほとんどの研究室や実験室はそれらのフロアにあるからだ.それゆえ、私の押すボタンの階数がたいてい最大値となる.だからなんだか嬉しくなるのである.歩いても簡単に登れるような 1-2 階の上昇でなく、誰が考えてもエレベーター利用が正当であろうと考える 6 階という階数差なのだ.自分がもっとも正当な利用者であるという気持ちから牢名主のような気分に一瞬なるのかもしれない.奇妙かつささやかなる優越感である.それゆえ、まれに 7-8 階へのボタンを押す人に出くわすと、なんだかすっと力が抜ける.淡い敗北感のようなものが生まれる.なんだか人間の小ささを象徴するような心の動きなのだけれど、本当のことだから仕方がない.

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