2010年1月24日日曜日
エレベーターのボタン
日常のごく小さなことがらの中に、フッと敗北感があったり、ときにはささやかな優越感があったりする.筑波にある私たちセンター教員のオフィスは 8 階建て建物の 7 階にある.たいていは 1 階からエレベータに乗ってオフィスに向かう.1 階から同乗する人も途中階から加入する人も、目標階はたいてい 6 階以下である.なぜならほとんどの研究室や実験室はそれらのフロアにあるからだ.それゆえ、私の押すボタンの階数がたいてい最大値となる.だからなんだか嬉しくなるのである.歩いても簡単に登れるような 1-2 階の上昇でなく、誰が考えてもエレベーター利用が正当であろうと考える 6 階という階数差なのだ.自分がもっとも正当な利用者であるという気持ちから牢名主のような気分に一瞬なるのかもしれない.奇妙かつささやかなる優越感である.それゆえ、まれに 7-8 階へのボタンを押す人に出くわすと、なんだかすっと力が抜ける.淡い敗北感のようなものが生まれる.なんだか人間の小ささを象徴するような心の動きなのだけれど、本当のことだから仕方がない.
登録:
コメントの投稿 (Atom)
閲覧数ベスト5
-
東京と熱海の間を新幹線こだま号で頻繁に往復するようになっ て、気になるものがいろいろと見えてきた.ここのところどうも気になって仕方なかったのが座席の肩の部分に飛び出しているキリンの角のような突起だ.乗る時によって、有ったり無かったりする(右の写真がツノあり、左の写真がツノなし...
-
図鑑に写真が掲載されているせいか、 ワレカラモドキは ダイバーさん たちによる認知度がけっこ う高い種類である. ワレカラの仲間とし ては 3 cm を超えるサイズのものも あって大きめだし、 シロガヤやアカ ガ ヤな ど大きめのヒドロ虫の群 体の茂みに 隠れているので、比較...
-
ナマコの不思議な食事風景を見た.自宅の玄関に、いろいろな生き物を入れては眺めている小型の水槽があって、今はその中に大きさ 20 cm くらいのマナマコが入っている.食用に貰ったのだが、すぐには食べなかったので水槽に入れたまま、ペットになってしまったものだ.眺めていると、赤みを帯...
-
東京海洋大学で開催された国際甲殻類学会の東京大会はたいそうな熱気に包まれていた.世界各国から集まった研究者たちが其処此処で固まりあって話し合う姿が見られ,私たちもそんな輪の中に入って楽しい時を過ごした.研究材料を同じくするいわば同好の士が集うと話も尽きない.関連分野の研究のレベ...
-
『われから絵本』が完成し、ついに世に出始めた. 『ワレカラ』は古今集や枕草子 にも名前が出てきて、むしろ古代の人々の間でよく知られた生き物だったようだが、残念ながら現代では知名度がかなり低い.そのワレカラを、絵本にしてみた. 絵は、 大学時代の同級生でもともとは両生類の研究者...
0 件のコメント:
コメントを投稿