2011年1月4日火曜日

科学読物研究会

科学の本って面白い
第6集 2003-2009年
連合出版 (2010 年)  1,575 円
 いまから 10 年以上前のことになるが、地元の下田市立下田中学校で特別非常勤講師を 3 年間務めていたことがある.理科部および全校全生徒対象にいろいろと自由な授業をやらせて頂いた.総合的な学習の時間を利用したものだったように思う.フクロウナギやチョウチンアンコウやハダカイワシなど深海魚の標本を他大学から借りてきて生徒たちにスケッチさせたり触らせたり、ウニを受精させて発生を見せたり、カブトガニの幼生を観察させたり、生徒たちの各々に空想上の生物を描いてもらって、それらを分岐分類で系統解析したり.自分の大学と臨海実験センタ−での研究業務と教育業務の傍らであるから、まあ何ともとてつもなく慌ただしいことであったが、楽しい経験だった.昨年の秋頃のこと、このときの授業をプロデュースして下さった MH 先生から科学読物研究会を紹介して頂いた.また、この研究会が 1981 年以来発刊し続けている『科学の本っておもしろい』というシリーズの新刊第 6 集 2003-2009(右上が表紙) を頂戴した.この本の前の方 1 割強が科学の本の普及活動について述べられた第1部で、続く第2部ではジャンル別に科学の本が紹介されている.7 年間に発刊された科学読物の 3,500 冊ばかりを検討対象として、そのうちから 365 冊について 1 ページあたり 2 冊ずつの配分で、紹介文が書かれている.加えて関連図書も156 冊が紹介されている.分類の項目の立て方がとても分かりやすいため、求めている本に容易に行き着くことができるし、自分の知らない分野の本を上手に探索してゆくこともできる.近頃は年間の本の出版数が夥しくなって、求める本に正しく巡り会うことがとても難しくなって来ている.そんな中でこのようなタイプの良い道標となるガイドブックのシリーズが 30 年にもわたって編まれ続けているというのは、ほんとうに素晴らしいことである.関わってこられた方々の熱意と努力が偲ばれる.私が下田中学でお世話になった MH 先生は第 4 集から本の紹介の執筆を続けてこられた.第 6 集巻末の執筆者リスト中に MH 先生他の先生方のお名前をたどるうち、下田臨海実験センタ−発生学研究室の卒業生で現在大阪教育大学科学教育センタ−の教員を務める NF 君の名前を見つけて驚いた.先日久しぶりに来訪した彼と話をしていたところ、やはりこの本の話が出て、いま科学教育の普及活動に力を入れているという話を聞いた.いつか私も、このガイドブックシリーズで取り上げて頂けるような科学読物や科学絵本を作り出してみたいものだ.私と NF 君の共通の恩師である W 先生は『研究は発電で教育は送電であるから、よい送電を行うためには絶え間ない発電が必要である』と言っておられた.この意味での発電と送電のバランスをとることは、いつもは難しい.どうもここのところ、私は送電過多になっているし、電気の質も劣化してきている.質の高い電気を安定供給できるように、研究に励んで充電にも努めたい.よくまとまった質の高い研究成果は美しいものであるはずで、それについて伝えようとすれば、たとえそれが口伝えの形をとっても読み物の形をとっても、それは一般の人にも分かりやすく受け止めやすいだろう.そんな良い研究をひとつ、でも素敵なひとつを完成させられるように、今年も励みたい.  

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