仙台宅にはテレビがない.下田暮らしの時代にはテレビ依存度が結構高かったので、当初はなんだか画像の情報に飢えたような感じだったのだが、じきに慣れてしまった.テレビに取って替わったのはラジオだが、ほとんど NHK しか聞かない.NHK 第1が主で、こちらがスポーツ中継や国会中継なぞをやっている時には NHK FM である.下田に居た時は電波状況が悪くて、とくに中波はほとんどまともに入らなかったので、いま都会のラジオ放送を満喫している.もっとも、聞きたい番組をリアルタイムで聞くほどの余裕はないので、当初は朝の情報番組と夜のニュース関連番組を聞くことが主体だった.ところが、在宅時に始終つけているうちにいろいろな発見があった.NHK 第1というのはニュース主体の放送かと思っていたら、なかなかに素敵なコンテンツがあることが分かって来た.お年寄りのための番組だと思っていたラジオ深夜便は、じつは魅力的なトークや情報に満ちている.落語をやっている時もある.真剣に聞きはじめると、眠れなくなってしまう.よく考えると、これは、じつは私がお年寄りに近づいたという証左だろうか?日曜の朝は、名作の要約朗読である文学のしずく、なぎら健壱のフォークに関するトークから、音に会いたいという過去の環境音再現番組、そして、落合恵子の絵本の時間へと、耳の離せない状態が続く.いやはやラジオは、侮れない.
上方演芸会と真打ち競演は漫才や漫談や落語などのお笑いをライブ録音で楽しめるものだ.やはりこれらの番組にも全く縁がなかったのだが、筑波大での月曜の授業のために日曜日の夕方に下田を発って、東京駅から高速バスで筑波に向かう途中、聞いていた携帯ラジオで真打ち競演という番組の存在を知って、それを聞くのが楽しみになった.バスで文字を読むと忽ちにして気分が悪くなる私は、行き来の高速バスではいつもラジオを聞いていたのだ.番組の開始と終了の時刻がちょうど高速バスに乗車している時間内に収まっていたのも幸いした.
そして、ズッポリとはまってしまったのが、ラジオドラマである.存在すら知らなかったのだが、書籍とテレビドラマの中間をゆく世界である.聞いていると、なんだかイメージの世界がふわっと眼前に広がってゆく.お笑い番組もほとんどのドラマも土日に集中していることに気がついた.しかし、土日のその時刻には在宅しないことが多い.そこで、ラジオ録音できるボイスレコーダー SANYO ICR-RS110M を購入した.操作性からみると、とても今のスマートフォン時代に販売している製品とは思えないような武骨かつ時代がかった物体なのだけれど、道具としては本当に便利で機能も優れている.メインのボイスレコーダー部分は持ち運びできる大きさである一方でスピーカー音量が小さいのだが、スピーカーアンプつきでアンテナにもつながっていてエネループ電池の充電ができるクレードルに座らせれば、文句無しの音量が出るし、安定した電波状態での録音もできる.MP3 ファイルとしてパソコンに取り込んで整理することだって、容易にできる.もう日常生活に手放せない状態になった.土曜朝のラジオ文芸館はとても楽しみで、このドラマっぽい朗読がきっかけで、読書に誘われたりしている.土曜の夜のしっかり楽しめるドラマは FM シアターである.これを聞きはじめると仕事が手に着かなくなってヤバいので、これを聞く楽しみを仕事を終えるための餌にしたりする.新日曜名作座はほとんど魔法の世界だ.とても2人の俳優だけで演じているとは思えない.しかもあらゆるジャンルの物語から毎週何かしら放送しているのである.森繁久彌と加藤道子がやっていた番組を 2008 年から西田敏行と竹下恵子が引き継いだということで、4年目だということになる.前作のように半世紀も続く番組となることを祈りたい.週末の他に週日の月曜日から金曜日の夜に 15 分ずつ放送されている少々ヤング向けのドラマもある.青春アドベンチャーだ.たいていは 5 回がユニットの続きものであるため、続きが翌日に持ち越されるときの、あの連続ドラマのイライラ感を楽しむことができる.大好きなアレックス・シアラーの物語が放送されていたのを知ったのがきっかけで、この連続ものも聞くようになった.
さて、明日は NHK ラジオの革命の日である.NHK ラジオのインターネットストリーミング放送が開始されるのだ.震災後しばらくの間、やはりストリーミングで聞くことができて、引越時期に電波の入りにくい下田で放送を楽しむことができて本当に幸せだった.震災関連の東北の情報を聞いたり、一般放送を楽しんだりして、ずいぶんと強力な心の支えになっていた.しかし、震災後の安否連絡情報の行き交いが少なくなる頃に休止となってしまっていたのだ.あの、休止を知った日にはがっかりしたので、本格的にインターネットで聞けるようになる日が来て、本当に嬉しい!NHK ネットラジオの名前は らじる★らじるで、ヘンテコな赤犬キャラも登場している.明日の午前 11 時から、ここで聞けるようになるらしい.http://www3.nhk.or.jp/netradio/ 楽しみである.
2011年8月31日水曜日
2011年8月19日金曜日
トチノキに癒される


2011年7月12日火曜日
復興支援拠点ホームページ
4 月から東北大学農学部のメンバーとなり、大震災からの災害復興のための研究に従事することになった.海洋生物学分野で、殊に水産業の復興のために私たちの成すべき仕事は果てしなく存在する.異動の決まった時には、異動前にまさか大地震があろうとは思っていなかった.ましてや、震災復興の最前線で働く事になろうとは、下田で 3 月 11 日を迎えるまでは夢にも思っていなかった.実際のところ、3 月 11 日を迎えた後でも、自分のことで精一杯で、何が起きたのかを実際に東北に来て、目で見てしっかり認識するまでは、自分が何をできるのか、東北で何かやれるのか、などということは、考える事もできなかった.
こちらに来て、6 月から漁場調査のために潜り始めた.漁師さん達は自分たちの漁場がどうなっているのか、調べる手立てすらない.でも、海中の様子を知りたがっていた.いまは家も漁船も車も失って、漁の再開の目処が立たなくても、海底に魚介類の元気な姿を確認できれば、明日への希望をもつ事ができる.今を耐えれば何とかなる日が来る、と思うことができれば、それは太い心の支えになる.この1ヶ月、潜水器材をトラックに積んで、走っては潜り、潜っては走り、を繰り返して来た.6 月後半になって、日本水産学会の災害復興支援拠点が東北大学農学部に設けられる事になった.私は支援拠点事務局のメンバーになった.初仕事はホームページの作成だ.素朴でぎこちない出来だけれど、なんとか約束の期日までに立ち上げる事ができた.
https://sites.google.com/site/fukkoushienkyotentohokuuniv/
復興と言うのは易く、被災した人々が普通の暮らしを取り戻すには、果てしない道をたどらなければならない.だからこそ、沢山の人たちの日々の前向きな力の積み重ねを絶やしてはならない.私たちも、微力ながら前進する力となりたいのだ.
こちらに来て、6 月から漁場調査のために潜り始めた.漁師さん達は自分たちの漁場がどうなっているのか、調べる手立てすらない.でも、海中の様子を知りたがっていた.いまは家も漁船も車も失って、漁の再開の目処が立たなくても、海底に魚介類の元気な姿を確認できれば、明日への希望をもつ事ができる.今を耐えれば何とかなる日が来る、と思うことができれば、それは太い心の支えになる.この1ヶ月、潜水器材をトラックに積んで、走っては潜り、潜っては走り、を繰り返して来た.6 月後半になって、日本水産学会の災害復興支援拠点が東北大学農学部に設けられる事になった.私は支援拠点事務局のメンバーになった.初仕事はホームページの作成だ.素朴でぎこちない出来だけれど、なんとか約束の期日までに立ち上げる事ができた.
https://sites.google.com/site/fukkoushienkyotentohokuuniv/
復興と言うのは易く、被災した人々が普通の暮らしを取り戻すには、果てしない道をたどらなければならない.だからこそ、沢山の人たちの日々の前向きな力の積み重ねを絶やしてはならない.私たちも、微力ながら前進する力となりたいのだ.
2011年4月17日日曜日
夜行バス
仙台への荷物の移動は、4 月に入ってからようやく動き出した引越便に任せた.ヤマト便や日通は 4 月に入っても下田から仙台までの輸送を受けてくれなかったので、ウンと言ってくれたアート引越センタ−に頼んで運んでもらった.東北新幹線はまだ全通していないので、自分の体の移動には自家用車または夜行バスを利用している.荷物の移送が必要な時には自家用車だが、東京圏から 5 時間、下田からだと 8 時間超かかる運転はやはりちょっと辛い.身ひとつで動くには、東京−仙台間の片道料金が 3,000-4,000 円程度の夜行高速バスの方が経済的だ.定期運行の路線バスではなくて、ツアー形式で客を募る高速バス便である.東北新幹線復旧前の今こそ書き入れ時と各地から観光バスをかき集めているらしく、かなり増発されている.私の乗車は、ふつう新宿西口から仙台駅東口に至る径路である.乗車のための集合時間になると深夜なのに周辺の歩道上は人で溢れ、ツアー会社ごとに点呼があって、自分の乗るべきバスの号車に各々が割り振られてゆく.4 列シートのトイレなしバスは途中 2 度ばかりサービスエリアなどで止まって、トイレタイムを設ける.その度ごとに車内の灯りがともされて、目を覚まさざるを得ない.寝心地の悪さと浅い眠りで到着時はふらふらだ.でも、経済的に『どこでもドア』的な空間移動ができるので、たいへんに重宝している.
2011年3月21日月曜日
最終回の脱稿
昨年 4 月からの 1 年間、静岡新聞の連載『静岡海描』の下段にある研究者コメントコラムのおおよそ 200 文字をほぼ毎週書き続けてきた.月曜日掲載だったのだが、素敵な水中カラー写真が顔の連載だったので、紙面がモノクロの時は休載となった.だから、『ほぼ』毎週である.先週末に、ついに最終回を脱稿した.ひと安心した.生物カメラマンの阿部秀樹氏は毎週写真を提供して私より遥かに分量の多い原稿を書き続けてこられた.いつもどこかしらに取材旅行に出かけておられる身で、よくぞ続けてこられるものだと感心しながら、私はその尻尾にしがみついてきた.最終回は海を漂う幼生の話で、海原にぽつんと漂うある底生生物の幼生が写っていた.こいつもやがて脱皮して変身して大人になるのだな、と思いながら原稿を書いた.大きな災害で人も物も大きなダメージを受けて、途方にくれているこの国も、人々が力を合わせて見事に脱皮して、そして前にも増して立派な体となって歩んでゆけるとよい.一日も早くそうなることを心から祈りながら、今できる支援を少しずつでも続けてゆきたい.
2011年3月19日土曜日
カナダからの電話
南三陸町志津川で毎年春にお世話になっている T 家の消息が知りたくて、震災直後から安否情報を集めていた.テレビ番組で T 家のご主人の声を聞いた気がしたので、その旨もメモして Google Person Finder に消息を知りたい旨登録して携帯連絡先を書き込んでおいた.するとしばらくして、留学中の T 家の娘さんがカナダから私の携帯に連絡を入れてきた.Finder を見たのでテレビ番組を自分も見てみたいということだった.その後まもなく、テレビ番組で出てきた場所に避難していることが確認できたらしい.ネット情報網のものすごい力を見た気がした.その後も Finder を通じて、多くの人々の安否確認ができた.でも、まだまだ直接話をするには至っていない.志津川の皆さんのご無事な声が聞きたい.今はただ祈るのみである.
2011年2月13日日曜日
本の背が声をかける
私は本屋に入って手ぶらで出て来ることがほとんどないうえに、本を捨てることも滅多にない.研究関連の本はとくに発行部数が少なく、古書店で安くなることもなかなか期待できない.書店に姿のあるうちにとりあえず捕まえておく.だから溜まる一方だ.決して読書速度が速いわけではないので、未読本が積み重なってゆく.積ん読が加速してゆく.いずれもとっても読みたい本たちなのだが、容易に順番が回ってこないうちに、ずいぶんと変色したり、本棚の奥の湿ったところなんぞにあるとカビが生えたりゴキブリの糞攻撃に曝されたりする.でも、仕事合間や家でごろっと転がった時なぞに、なんだか本の背に呼ばれるように思うことがある.いまこのタイミングで私を手に取りなさいと、声をかけられる.そんな時は、ふと手に取ったものが、その瞬間にとても必要な情報をたっぷりジューシーに含んでいて、私の中の読書畑の乾きを潤してくれる.なんとなく、ゾロゾロと本の背が始終目に触れていることがとっても大事な気がする.何もかも電子書籍に変わってしまったら、本の背との密やかな会話もなくなってしまいそうだ.何もかもが実体のないあぶくの様なものに変わってゆく世界には、容易についていけそうにない.
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